会場レポート:「大正ロマン×百段階段」

「百段階段」は日本美のミュージアムホテル、ホテル雅叙園東京館内にある東京都指定有形文化財。ホテル雅叙園東京の前身である目黒雅叙園3号館にあたり、1935(昭和10)年に建てられたものです。7つの部屋の各部屋の天井や欄間には、当時屈指の著名な画家たちが創り上げた美の世界が描かれ、昭和の竜宮城とも呼ばれています。

今回は、この「昭和の竜宮城」に大正ロマンの世界が広がります。階段を上がってみましょう。
大正ロマンの旅への出発(十畝の間)

文化財「百段階段」を舞台とした時を超える旅の始まりです。十畝の間では、大正ロマンをコンセプトとした着物のコーディネートとモダンガールの装いとともに、「お部屋でのひととき」「旅行へお出かけ」などのワンシーンをイメージした展示が大正ロマンの旅への出発へ誘います。

衣装は松竹衣裳によるもの。それぞれのシーンにはストーリーを持っています。日本家屋に絨毯を敷き椅子やテーブルを配した和洋折衷の室内装飾は、大正から昭和にかけて流行した、洋風を採り入れた住宅をイメージしているということです。

百貨店ワルツ(漁樵の間)

単に買い物をする場所ではなく文化や流行を創出する場であり、人々の憧れのつまった特別な空間であった百貨店。文化財「百段階段」で最も絢爛豪華な部屋「漁樵の間」に、華やかで幻想的な百貨店の世界が出現します。

『百貨店ワルツ』(2016年・実業之日本社刊)は、今もっとも注目を集める作家の一人、マツオヒロミの商業初単行本。虚構の20世紀初頭のデパートを舞台としたコミック&イラスト集として大ヒットを記録し第20回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品にも選抜されました。

虚構のデパート「三紅百貨店」を舞台に、1階から6階の各売場、喫茶室、食堂、空中庭園などそこにいる人々や商品を鮮やかな色づかいと繊細な筆致で描き出しています。
ここは皆様のための全く新しい宮殿。愉快に優雅に足取り軽く。
(『百貨店ワルツ』「ご挨拶」より)
ときめくような店内をお楽しみください。さて、まずは何階にご案内致しましょうか…。
文化財「百段階段」と同い年の「日本橋三越本店」の資料の展示も。

漁樵の間 編集部撮影
国の重要文化財として指定されている日本橋三越本店本館の元となる建物は、地下2階地上7階の、当時は「国会議事堂」「丸ビル」に続く大建築で、各フロアで取り扱う商品も「東洋一の百貨店」と呼ばれるにふさわしい充実したものでした。