[会場レポ]ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展(Bunkamura ザ・ミュージアム、渋谷)※会期終了

2019年10月11日

投稿:ミュージアムズ編集部
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貴族の宮廷空間へ誘う絵画と陶磁器の共演
Bunkamura 30周年記念 建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展が開幕

 Bunkamura ザ・ミュージアムでは10月12日(土)より、リヒテンシュタイン侯爵家秘蔵のコレクション展が開催されています。

 リヒテンシュタインは国名が侯爵家(君主)の家名となっている世界で唯一の国。スイスとオーストリアにはさまれた小国ながら、世界屈指の規模を誇る個人コレクションを有しており、その華麗さは宝石箱にもたとえられます。本展は、ルーベンス、ヤン・ブリューゲル(父)、クラーナハ(父)を含む北方ルネサンス、バロック、ロココを中心とする油彩画、さらにヨーロッパでも有数の貴族の趣向が色濃く反映された、ウィーン窯を中心とする優美な陶磁器も合せ、約130点で構成されます。会期は2019/12/23(月)まで。

  • 2019年10月11日:報道向け内覧会を取材、会場レポートを追加
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会場レポート

小泉孝太郎さんご来場

 開幕に先立ち10月11日に開催されたプレス向け内覧会には、俳優の小泉孝太郎さんもご来場。 今回、小泉さんは本展の音声ガイド・ナビゲーターに就任されています。

  • 展覧会のボードを持つ小泉孝太郎さん プレス向け内覧会にて編集部撮影

 展覧会も観覧された小泉孝太郎さんは、一枚の絵画や陶磁器が与えてくれる、日常を忘れるような贅沢な時間に浸られたということで、展覧会のタイトルにもあるように宝石箱に包まれるこの感覚を、会場で多くの人に味わって欲しいとコメントされました。

展示風景

  • 記事後半に作品画像を大きく紹介していますのでここでは会場の雰囲気のみアップします。
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一般撮影可能エリアも

 会場内は撮影禁止ですが、最後のセクションのみ撮影可能エリアとなっています。フォトブースではなくて1つの展示エリア丸々撮影OKというのは珍しいのではないでしょうか。まさにちょと贅沢な時間ですよね。

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グッズも充実のミュージアムショップ

 豪華な図録の他、編集部的にはスティックケーキが気になります…。

作品紹介と展覧会のみどころポイント

 今年建国300年を迎るリヒテンシュタイン侯国は、かつて神聖ローマ皇帝に仕えたリヒテンシュタイン侯爵家が統治しています。アルプスに抱かれた小さな国土にはライン川が流れ、大都市の喧騒とは無縁な穏やかな時間が流れています。この国は現在金融業などが盛んで、小さいながら世界屈指の豊かさを誇りますが、昔から侯爵家は代々領地経営に成功して富をたくわえ、皇帝にも貸し付けを行うほどでした。その富を背景として積極的に収集した美術作品により、現在のコレクションが形成されていきました。

  • [左] ルーカス・クラーナハ(父)《聖バルバラ》 1520年以降、油彩・板 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [右] ぺーテル・パウル・ルーベンスと工房《ペルセウスとアンドロメダ》 1622年以降、油彩・キャンヴァス 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna

 リヒテンシュタイン家の歴代の当主は早くからオーストリアを統治していたハプスブルク家に仕え、その傍ら豊富な財源で領地を購入し、支配地を拡大していきます。侯爵の地位を獲得したのは1608年、カール1世侯(1569-1627)のときで、当時の神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の下で顧問官などの要職を歴任していたカール1世侯は、ルドルフの収集癖に影響を受けたと考えられています。さらに、アントン・フロリアン侯(1656-1721)の代に神聖ローマ皇帝カール6世の承認のもと、当時所有していた領地を統合することにより、1719年にリヒテンシュタイン侯国が成立しました。ファドゥーツを中心とした現在のリヒテンシュタイン侯国の姿は、1938年にフランツ・ヨーゼフ2世侯(1906-1989)がウィーンから移住してきて以降のものです。戦争とその後の混乱で広大な領地は失ってしまいましたが、リヒテンシュタイン侯国は新たな形で存在感を発揮していきます。

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  • [左] フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー 《磁器の花瓶の花、燭台、銀器》 1839年、油彩・板 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [右] ウィーン窯・デュ・パキエ時代(1718-1744)《カップと受け皿(トランブルーズ)》 1725年頃、硬質磁器、エナメルの上絵付 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
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  • [上段左] マルコ・バザイーティ《聖母子》 1500年頃、油彩・板 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [上段中] ヨーゼフ・ノイゲバウアー 《リヒテンシュタイン侯フランツ1世、8歳の肖像》 1861年、油彩・キャンヴァス 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [上段右] モーリッツ・ミヒャエル・ダフィンガー ウィーン窯・帝国磁器製作所(1744-1864) 原画:ロッソ・フィオレンティーノ《絵皿「リュートを弾くクピド」》 1806年頃、硬質磁器、上絵付、金彩、鍍金 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [下段左] ヤン・ブリューゲル(父)《市場への道》 1604年、油彩・銅板 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [下段右] フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー 《イシュル近くのヒュッテンエック高原からのハルシュタット湖の眺望》 1840年、油彩・板 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna

 リヒテンシュタイン侯爵家は14世紀頃から収集活動を始めていたと考えられていますが、特にカール・オイゼビウス侯(1611-1684)は「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」との家訓を遺しています。そしてコレクションに関して最も重要な人物は、その子ヨハン・アダム・アンドレアス侯(1662-1712)でしょう。彼は情熱をもって美術作品を収集しただけでなく、コレクションを家族信託遺贈とし、個人の所有ではなく家系に属するものとして侯爵家の跡取りのみが相続できるようにしました。リヒテンシュタイン美術館でもあったウィーンの夏の離宮を建設したのもこの侯爵です。こうしてコレクションを守る意識が代々受け継がれていたからこそ優れた芸術品は戦火をくぐり抜け、世界が注目する珠玉の作品を今なおわれわれが目にすることができるのです。

  • [左から1番目] ウィーン窯・帝国磁器製作所、ゾルゲンタール時代(1784-1805) 《カウニッツ=リートベルク侯ヴェンツェル・アントンの肖像のある嗅煙草入》 1785 年頃、磁器 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [左から2番目] ウィーン窯・帝国磁器製作所 原画:ベルナルド・ベロット 《ベルヴェデーレからのウィーンの眺望が描かれたコーヒーセット》 1808年頃、 磁器、エナメルの上絵付、鍍金、金彩

    所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [左から3番目] 有田窯《青磁色絵鳳凰文金具付蓋物》 金属装飾:イグナーツ・ヨーゼフ・ヴュルト 
    磁器:上絵付1690-1710年、金属装飾:鍍金されたブロンズ 1775/1785年、人物像:後補 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [左から4番目] 《青磁金具付大壺》 磁器:清王朝(1644年 - 1912年)、金属装飾:1760 - 70年頃、 磁器:青磁 鍍金されたブロンズ 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [左] 中国・景徳鎮窯《染付花鳥文金具付壺》 金属装飾:イグナーツ・ヨーゼフ・ヴュルト 磁器:青の下絵付、順治~康煕年間(1644-1723)、金具:鍍金されたブロンズ 1775/1785年 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン 
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
  • [右] ウィーン窯・帝国磁器製作所 ヨーゼフ・ガイア― 《金地花文クラテル形大花瓶》 1828年頃、硬質磁器
    所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ / ウィーン
    © LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna

開催概要

  • 展覧会名:Bunkamura 30周年記念 建国300年 ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展
  • 会期:2019/10/12(土)~12/23(月)
  • 休館日:10/15(火)、11/12(火)、12/3(火)
  • 開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
    • 毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
  • 会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横)
  • 主催:Bunkamura、日本経済新聞社、テレビ東京
  • https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_liechtenstein/

入館料

  • 一般:1,600円(1,400円)
  • 大学・高校生:1,000円(800円)
  • 中学・小学生:700円(500円)
    • ※()内は20名様以上の団体

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