[ 開催中 ] 特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」 東京国立博物館 東洋館3室

東京国立博物館 東洋館3室で、2019年11月6日(水)より特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」が開催中です。本展覧会は、ザ・アール・サーニ・コレクションが誇る名品の中から厳選された117件を紹介するもので、地中海地域からアジア、アフリカ、中南米といった地域の古代社会に由来する作品を一度に鑑賞することができる、貴重な機会となります。編集部では開幕に先がけて行われた報道内覧会を取材しました。
- 取材協力:東京国立博物館様
- 会場内の写真については全て報道内覧会(2019年11月5日)にて編集部撮影、記事中の写真、画像、文章等のコンテンツについて転載および引用を全て禁止します
ザ・アール・サーニ・コレクション
カタール王族のシェイク・ハマド・ビン・アブドラ・アール・サーニ殿下が収集されたザ・アール・サーニ・コレクションは、その豪華さと多様な地理的・文化的背景を特色としています。古代から近現代までを網羅する傑出した美術品の数々は、人類の創造性のひとつの到達点を示しており、2020年には、パリのコンコルド広場に面したオテル・ドゥ・ラ・マリーンに特設されるミュージアム・スペースでも公開が予定されています。
会場のようす
- このセクションは全て編集部による撮影

東京国立博物館 東洋館は谷口吉郎氏による設計で、昭和43年に開館した後、平成25年1月にリニューアルオープンしました。地下を含む全6フロアに、中国、朝鮮半島、東南アジア、西域、インド、エジプトなどの美術と工芸、考古遺物が展示されています。編集部が確認した限り、東洋館で特別展が開催されるのは、平成25(2013)年の東洋館リニューアルオープン記念 特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」以来6年ぶりです。

特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」 は東洋館3室で開催。全面ガラス張りの展示ケースが多数配置された、美しい展示会場です。
権威者の知性を強調するナイジェリアの古代文化「ノク」
古代の権威者の姿は、その文化の中で最も理想化された状態で表現され、八頭身どころか12 頭身であるとか、男女の見分けすらつかないほどに神々に近づくレベルに美化された王族の像なども。
写真は、そういう意味でユニークな男性像。日本でもあまり知られていないナイジェリアの古代文化「ノク文化」のものです。大きな頭部は高い知性を表現しているとのことで、特徴的な顔の表情を含めノク文化にとっての理想とされたものをうかがい知ることが出来ます。

- 画面中央:男性像頭部 ナイジェリア ノク文化 前5~後5世紀 粘土 ザ・アール・サーニ・コレクション蔵
宇宙は無限のトウモロコシ畑!?
古代の中南米では、宇宙は無限のトウモロコシ畑であるとされ、トウモロコシが神格化されていたということです。トウモロコシは食料以上の存在であり、ある地域では人間はトウモロコシから創造されたと考えられていました。
トウモロコシのライフサイクルは時の流れ、人間の運命に重ね合わされ神として捉えられていたのです。写真の画面右の石斧はメキシコのオルメカ文化のもので、残念ながら半分に折れています。もとは50㌢近い長さのある大きなもので、表面にはオルメカのトウモロコシの神が刻まれています。

- 画面右:石斧 メキシコ オルメカ文化 前9~前5世紀 翡翠 ザ・アール・サーニ・コレクション蔵
作品紹介
展覧会はそれぞれ「人」「神」「自然」をテーマとした3章構成。
第1章:人
1章では主に、各地の古代社会を統治していた王や有力者にまつわる工芸品をとりあげます。
- [上段左] 《王像頭部》 赤碧玉 エジプト 前1473~前1292年頃
- [上段中] 《人物像「バクトリアの王女」》 エレクトラム、石、貝 中央アジア 前2300~前1800年頃
- [上段右] 《仮面》 翡翠、貝 グアテマラ 3~6世紀
- [下段左] 《飾り板》 金、カーネリアン、瑪瑙 央アジア 前2千年紀中頃
- [下段右] 《ブレスレット》 金、赤碧玉、ガラスほか エジプト 前1044~前994年
展示作品を比べてみると、それぞれの文化によって、嗜好やデザインが異なっていることが分かります。一方、古代の階層社会において支配者層は自らの権威を積極的に示す必要があったこと、古代のあらゆる社会が特有の死生観のもと、死者や来世との関わりをもっていたことなど、各地の古代文化に共通するふるまいも見えてきます。
第2章:神
各地の古代文化が生み出した神像や精霊像、聖なる儀式に関連する作品が紹介されます。
- [上段左] 《女性像「スターゲイザー」》 大理石ほか アナトリア半島西部 前3300~前2500年頃
- [上段中] 《瓶》 瑪瑙 地中海地域 150年頃
- [上段右] 《人形容器》 金 コロンビア 5~6世紀
- [下段左] 《タンバリン奏者像》 アラバスタ―、カーネリアン、凍石 メソポタミア 前2500年頃
- [下段右] 《浮彫》 アラバスタ―、金、貴石、青銅ほか アラビア半島南部 100年頃
古代の人々にとって、安定した社会を営むことは簡単ではありませんでした。ちょっとした天候不順が深刻な飢饉をもたらし、対立する都市や異民族との戦争が頻発する―このような世界で暮らした人々にとって、自然界や人間社会を超越した存在である神々の恩寵を得ることは極めて重要だったはずです。このことが、2章の展示作品が製作された背景です。古代世界には多様な宗教と信仰が存在しましたが、どの社会の人々も、神々との関係を問いながら、自分たちの生存と社会の安定に力を尽くしていたのです。
第3章:自然
人々は自然界をどのように認識してきたのでしょうか。3章ではこのテーマに着目し、主に動物の形を模した工芸品を展示します。
- [上段左] 《アイベックス》 青銅 アラビア半島南部 前1千年紀後半
- [上段中] 《鼻飾り》 金、ラピスラズリ/ソーダ石ほか ペルー 2~4世紀
- [上段右] 《リュトン》 金、カーネリアン、石 アナトリア半島 前2千年紀前半
- [下段左] 《クマ》 金銅 中国 前206~後25年
- [下段右] 《化粧用壺》 水晶 エジプト 前15~前13世紀頃
どの古代社会の人々も、動物を模した器や装身具を用いることで、自然界や神々の力にあやかっていました。例えば、ヤギなどの大きな角をもつ野生動物は、自然界の力強さを象徴したとされます。神々と関連づけられた聖動物の小像は、神聖な力が宿っていると信じられました。
展示作品を比べてみると、作品ごとに、動物の様々な佇まい、表情が切りとられています。多様な作品は、各地に異なる自然環境が存在していたこと、人々の興味の対象が文化によって異なっていたことを物語っています。
- ※作品画像はすべてザ・アール・サーニ・コレクション蔵
- ⓒThe Al Thani Collection
開催概要
- 展覧会名:特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」
- 会期:2019年11月6日(水)~2020年2月9日(日)
- 会場:東京国立博物館東洋館3室(東京・上野公園)
- 開館時間:9:30~17:00金曜・土曜は21:00まで*入館は閉館30分前まで
- 休館日:月曜日、12月26日(木)~2020年1月1日(水・祝)、1月14日(火) *ただし1月13日(月・祝)は開館
- 観覧料:一般620円(520円)、大学生410円(310円)
- *高校生以下および満18歳未満と満70歳以上の方は無料。入館の際に年齢のわかるものをご提示ください。
- *()内は20名以上の団体料金です。
- *総合文化展観覧料及び開催中の特別展観覧券(観覧当日に限る)でご覧いただけます。
- *特別展「正倉院の世界」(10/14~11/24)、特別展「出雲と大和」(2020/1/15~3/8)は
別途観覧料が必要です。 - 主催:東京国立博物館、ザ・アール・サーニ・コレクション財団、NHK
- お問合せ:03- 5777- 8600(ハローダイヤル)
- ウェブサイト:https://www.tnm.jp/
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