東京国立博物館 平成館にて6月16日(金)に開幕する特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」。古代メキシコの代表的な3つの文明「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」に焦点を当てた本展では、メキシコ国内とアメリカ以外で初めて公開されるマヤの「赤の女王(レイナ・ロハ)」の墓の出土品をはじめ、メキシコ国内の主要博物館から厳選した約140件が近年の発掘調査の成果も交えて紹介されます。
本記事では、東京国立博物館では1955年以来約70年ぶりとなる古代メキシコ文明に関する展覧会となる本展の見どころを一部展示品の画像とともにご紹介していきます。
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古代メキシコの3つの文明にフォーカス
35もの世界遺産があるメキシコ。古代都市の遺跡群は高い人気を集めます。前15世紀から後16世紀のスペイン侵攻までの3千年以上にわたり、多様な環境に適応しながら花開いた独自の文明たち。特別展では、そのうちの代表的な3つの文明「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」にスポットを当てていきます。
- 前1200年頃から広範な地域に栄え、暦や文字など高度な知識を有する王や貴族が中心となって、交易と戦争を繰り広げたマヤ文明。
- 1325年に首都テノチティトラン(現メキシコシティ)を築き、軍事力と貢納制度を背景に繁栄を謳歌したアステカ文明。
- 前1世紀から後6世紀までメキシコ中央高原に栄え、「太陽のピラミッド」「月のピラミッド」「羽毛の蛇ピラミッド」を擁する巨大な計画都市を築いたテオティワカン文明。
火山の噴火や地震、干ばつなど厳しい自然環境のなか、人々は神を信仰し時に畏怖しながら、王と王妃の墓、大神殿、三大ピラミッドなど各文明を代表する壮大なモニュメントを築きました。特別展では、普遍的な神と自然への祈り、そして多様な環境から生み出された独自の世界観と造形美を通して、古代メキシコ文明の奥深さと魅力に迫ります。
展覧会の3つのみどころ
- マヤの「赤の女王(レイナ・ロハ)」が奇跡の初来日
- 古代メキシコの至宝約140件が一挙集結
- メキシコが世界に誇る古代都市遺跡の魅力が映像や再現展示で登場
展示予定作品の一部紹介
《死のディスク石彫》
メキシコ先住民の世界観では太陽は沈んだ(死んだ)のち、夜明けとともに東から再生すると信じられていました。この作品は地平線に沈んだ夜の太陽を表わすと考えられています。復元すると直径1.5mにもなる大型の石彫です。

テオティワカン文明、300~550年
テオティワカン、太陽のピラミッド、太陽の広場出土
メキシコ国立人類学博物館蔵
《太陽のピラミッド》
200年頃建造。アメリカ大陸最大級のピラミッドで、底辺223m四方、高さ64m。「火」「戦い」「天空」を象徴するとされます。

《嵐の神の壁画》
テオティワカンでは、集合式住居群や公共建造物、あるいは儀礼施設に色彩豊かな壁画が数多く描かれ、都市空間を彩っていました。

テオティワカン文明、350~550年 テオティワカン、サクアラ出土
メキシコ国立人類学博物館蔵
《鳥形土器》
多くの貝が貼り付けられた、鳥の形をかたどった土器。メキシコ湾岸地域との交易で貝などを手に入れていた商人の墓からの出土品です。

テオティワカン文明、250~550年 テオティワカン、ラ・ベンティージャ出土
メキシコ国立人類学博物館蔵
《支配者層の土偶》
ユカタン半島のハイナ島では、王や貴族をはじめ当時の様々な役職の人々の姿を写した土偶が見つかっています。その装いは、優れた工芸品や交易による品物で豊かに彩られています。

マヤ文明、600~950年
ハイナ出土
メキシコ国立人類学博物館蔵
《トニナ石彫171》
球技の場面を描いた石彫で、中央のゴムボールの上に西暦727年に当たる年がマヤ文字で記されています。球技をしているのはカラクムルとトニナの王で、両国の外交関係を示すものと考えられます。

マヤ文明、727年頃
トニナ、アクロポリス、水の宮殿出土
メキシコ国立人類学博物館蔵
《チャクモール像》
後古典期のチチェン・イツァやトゥーラで多く見つかる彫像で、アステカにも受け継がれました。腹の部分が皿のようになっており、供物や時には生贄の心臓が捧げられることもあったとみられます。

マヤ文明、900~1100年
チチェン・イツァ、ツォンパントリ出土
ユカタン地方人類学博物館 カントン宮殿蔵
《碑文の神殿(パカル王墓)と13号神殿(赤の女王墓)》
400~800年頃に隆盛した都市国家パレンケ。歴代の王は、おそらく18名とみられます。パカル王が埋葬された碑文の神殿(写真左)をはじめ、美しい漆喰装飾で知られる神殿群は、かつて鮮やかな赤色で塗られていました。

《96文字の石板》
パレンケ遺跡の王宮で見つかった、パカル王以来の歴代の王が即位したことが刻まれた石板です。日本のように、優れた書跡碑文は芸術品として愛好されましたが、その最高峰に位置するものです。

マヤ文明、783年
パレンケ、王宮の塔付近出土
アルベルト・ルス・ルイリエ パレンケ遺跡博物館蔵
《赤の女王のマスク・冠・首飾り》
パレンケ13号神殿で真っ赤な辰砂(水銀朱)に覆われて埋葬されていた「赤の女王」。このマスクをはじめとする品々を身に着けていた墓の主は、パカル王妃であった可能性が指摘されています。

マヤ文明、7世紀後半
パレンケ、13号神殿出土
アルベルト・ルス・ルイリエ パレンケ遺跡博物館蔵
《テンプロ・マヨール》
創建は1390年頃。以来拡張を続け、7層にも及ぶ大神殿。最終的には底100×80m、高さ50mに達したとみられます。

《鷲の戦士像》
テンプロ・マヨールの北側、鷲の家で見つかった等身大とみられる戦士の像。王直属の「鷲の軍団」を構成した高位の戦士、もしくは戦場で英雄的な死を遂げ鳥に変身した戦士の魂を表わしているといわれます。

アステカ文明、1469~86年
テンプロ・マヨール、鷲の家出土
テンプロ・マヨール博物館蔵
《トラロク神の壺》
雨の神であるトラロクはメソアメリカで最も重要視され、多くの祈りや供え物、生贄が捧げられた神です。水を貯えるための壺にトラロク神の装飾を施すことで、雨と豊穣を祈願しました

アステカ文明、1440~69年
テンプロ・マヨール、埋納石室56出土
テンプロ・マヨール博物館蔵
《人の心臓形ペンダント》

アステカ文明、1486~1502年
テンプロ・マヨール、埋納石室174出土
テンプロ・マヨール博物館蔵
アンデスなど南米の諸文明とは異なり、古代メキシコでは金は大変珍しいものです。最近の発掘調査で、神への捧げものとして生命力の象徴である心臓や、神々にまつわるモティーフが用いられた金製品が見つかっています。
リソース
- 記事制作ご協力:特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」プレスリリース
- 最新の情報については公式サイトをご確認下さい。
開催概要
- 展覧会名:特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」
- 会期:2023年6月16日(金)~9月3日(日)
- 会場:東京国立博物館 平成館
- 観覧料(当日): 一般 2,200円、大学生1,400円、高校生 1,000円
- 前売り他、各種企画チケットについての詳細は公式サイトのチケット情報ページをご確認下さい。
- https://mexico2023.exhibit.jp/tickets