追記:2022年7月より大阪展が大阪市立自然史博物館ネイチャーホールにて開幕します!
※下記の東京展は会期終了です。ご注意を。

国立科学博物館(東京・上野公園)にて特別展「大地のハンター展 ~陸の上にも4億年~」が2021年3月9日(火)より開催中です。期間は6月13日(日)まで。陸で捕食活動をしている動物を新旧・大小問わず展示するという本展は、国立科学博物館が誇る貴重な標本のコレクションを中心に、大型のワニやヘビ、ネコ科の哺乳類、フクロウなどの鳥類、トンボやハチなどの昆虫類をはじめとする300点以上の標本展示で構成される大ボリュームの展覧会です。
編集部では開幕に先だち3月8日に開催されたプレス向け内覧会を取材、この「科学展覧会の決定版」である特別展の魅力を取材しました。
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展覧会の構成やみどころについて、国立科学博物館さまご提供の画像をふんだんに使った記事で紹介しています。まだの方はこちらもどうぞ。
「大地のハンター展」会場レポート

今回の特別展のテーマは「ハンター」ということで、動物が生きるための営みとしての「捕食」にフォーカス。絶滅したものから現生のものまで、哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類、昆虫類、節足動物が躍動!多彩な捕食者の姿を300点以上の圧倒的なボリュームの標本展示で紹介していきます。
まずは巨大ワニ「デイノスクス」に呆然!
まずは展示会場入り口近くにいる、白亜紀の巨大なワニ「デイノスクス」の生体復元モデルをご覧下さい!

本展で初公開された、白亜紀に生息していた巨大ワニ「デイノスクス」の実物大生体復元モデル。この巨大な模型は、最新の研究成果をもとに国立科学博物館の研究員による監修で制作したものです。デイノスクスは中生代白亜紀に生息し、ティラノサウルス科の恐竜も捕食していたとされます。

デイノスクスは全長12mにも達する大型ワニ類で、強力な顎が生み出す噛む力は1㎠あたり1600㎏ともいわれ、これはティラノサウルスの900㎏をはるかに上回ります。生体復元モデルは水から上がってきた状態を表現しており、この大きさでも全体の6分の1程度ということです。
大地に生きるハンター達の数々!
本展には国立科学博物館が所蔵する貴重な標本や協力機関が所蔵する重要標本が一堂に会し、他では見ることのできない「捕食者の展示」が展開されています。「ライオン」や「チーター」などのネコ科哺乳類、「ワシ」や「ハヤブサ」などの猛禽類、動物カフェでも人気の「フクロウ」の大集合展示など、人気の高い動物標本が勢揃いしています。
哺乳類はもともと昆虫食の動物で、新生代になっていくと狩りをする猫系の動物などが出てきたそうです。

もちろん、めったに見られない貴重な展示物も…。
ワニガメ
本展の総合監修を担当した川田伸一郎先生(国立科学博物館 動物研究部)によれば、「かなりがんばって」とある水族館から譲ってもらったという貴重な標本。

フクロウのコーナー
これだけの数のフクロウを一度に観覧できる機会はそうそうありません。フクロウも昆虫の他、魚、獣を狩るなど種類によって様々な食性が分かれるそうです。

ハシビロコウ
動物園などで「動かないことで有名」な鳥、ハシビロコウ。水辺で何時間も動かずに待ち続けて肺魚が空気を吸いに水面に出た瞬間にハントをするそうです。めったに見る機会のない、非常に大きな足にも注目を。

カメレオン
オオカメレオンは舌を出した状態の標本で展示。会場には剥製標本でハントの様子を再現している迫力ある展示も多数あります。

モグラがいっぱい!
これ、なんだかわかりますか?みんなモグラなんです。土の中は安全なのでいろいろな動物が土中で生活。これらを狩るためには土を掘る能力が必要となり、モグラは尻尾は小さく手が大きく進化していきました。

写真には映っていませんが、オーストラリア中部の乾燥地帯にいる、モグラ科の祖先にあたる「フクロモグラ」は土に潜らないため、外形はネズミとあまり変わりません。日本と世界各地のモグラを一堂に見比べることで、モグラ達の進化の具合を実感できます。

写真多めに紹介していますが、展示内容の氷山の一角でまだまだ紹介しきれません。ぜひ会場に足を運んでみて欲しいです。
展示室間の通路には「研究者イチオシのおもしろハンター大集合」という巨大ボードが。手書き&手作り風の掲示では、本展参加の各研究者イチオシのハンターたちのひみつが熱く語られています。ここも必見。

続いて、ハンティングの技術をテーマにしたコーナーへ。今度はヘビやハチ、毒を持っていたり血を吸ったりする、危険な生き物たちがぞくぞく登場します。
ハンティングの技術を紹介するコーナーにはオモシロ怖い生き物がぞくぞく登場!

実は歯がない!オオアリクイ
オオアリクイは名前のとおり、アリ食に特化した食性で、40キロの体重を維持するためには1日に3万個体ものアリ・シロアリを捕食する必要があります。そのため、1日のほとんどをアリ塚の回りをぐるぐる回って過ごしているということです。

オオアリクイの顎には歯が全くなく、アリ塚の中に長い舌を垂らして、釣りをするようにして捕食します。
ヘビは偏食の専門家!?
ヘビは爬虫類の中でもトカゲについで大きなグループで、3800種類以上が知られています。しかも全種が肉食。幅広い動物を捕食するジェネラリスト(広食性)の種類の他に、特定の獲物だけを好んで食べるスペシャリスト(狭食性)の種類が存在していて、カエルしか食べないもの、同じ仲間であるヘビしか食べないものなど様々な偏食家が。

こういった偏食タイプの動物は、特定の獲物に偏って食べることに特化することで、ライバルとの競争を避け、効率よくエサにありつくことを狙っているのだそうです。また、それにあわせた進化を遂げています。
なかでも、石垣島、西表島に住むイワサキセダカヘビはなんと右巻きのカタツムリしか食べないというスペシャリストすぎる種類のヘビ。右巻きのカタツムリの中身を効率よく捕食するために、下アゴの歯の数が左右非対称になっています。残念ながら写真を撮りそびれてしまったので、ぜひ会場で見て欲しいです。
見た目と裏腹。吸血鬼ならぬ給血鳥
タガメ、蚊などとともに血を吸う生き物のコーナーに展示された可愛らしい鳥。しかしこの鳥も恐ろしいヤツラです。

チスイガラパゴスフィンチといって、ダーウィン島とウォルフ島のみに分布する、鳥の仲間です。この鳥はカツオドリの腰をクチバシで突いて、流れる血を飲む習性があります。鳥の中で唯一、血液を常食とする種類だということです。
コモドオオトカゲの毒とは
世界最大のトカゲのひとつ、コモドオオトカゲ。全長3m、体重はなんと160Kgに達するという巨大なトカゲですが、イノシシやシカなど自分より大きな獲物をハンティングすることもあるそうです。コモドオオトカゲの狩りの仕方は血液を凝固を妨げる「毒」を使うもので、噛まれた獲物は失血が止まらなくなって徐々に弱り、倒れます。

会場では水牛を倒すコモドオオトカゲの狩りの映像が紹介されていました。
世界最大のクモ
ハンターと言えば、クモということで「ハンティングのテクニシャン」と題した大きいコーナーで展示されていました。

写真の右側、手前上はオオツチグモ。いわゆるタランチュラと呼ばれる種類です。凶悪そうな見た目に反し、実はそれほど毒は強くないらしいです。
みんな前足がカマ
鎌を持つ昆虫の代表格といえばカマキリ。ですがカメムシ目のミズカマキリ、ハエの仲間のカマバエなど鎌状の前足を持つ昆虫は意外とたくさん存在しています。異なった系統で似たような特徴が独立して進化する現象は「収斂(しゅうれん)現象」と呼ばれています。

ショップも充実!

このエリアだけで半日いけそうな第二会場出口の特設ミュージアムショップ。「デイノスクス」の生体復元模型のメイキングについて詳細な解説が読めるなど、今回も大ボリュームの特別展図録は購入必須。他にもハンター達のおもしろ可愛らしいグッズがところせましと並んでいました。

昆虫食コーナーも
話題の昆虫食のコーナーにはタガメサイダーも。これはちょっと勇気が出なかったのでパスしてしまいましたが、誰か試した人、そっとどんな味だったか教えてください…。

ミュージアムショップについては後日アイテム一覧などとともに特集したいと思います。
編集後記(記者の感想など)
カハクが送る、待望の特別展。1年半待った甲斐がありました。新型コロナウイルス感染症拡大防止の対策もあるのか、通路が大きく取られた広い会場には、所狭しと危険な生き物がひしめいています。
まずは最初の白亜紀の巨大ワニ「デイノスクス」の生体模型に度肝を抜かれます。水から上がってきたシーンを再現したということで、この巨大さにも関わらず全体の6分の1にすぎないということにもう一度驚き、この巨大ワニが恐竜すら捕食していたというのにも納得。
ライオンやトラなどよく知られているものから、ガラガラヘビ、サソリ、オオツチグモ(タランチュラ)といった博物館でしか見たくないもの、さらにはチスイガラパゴスフィンチのような非常に珍しいものなど、一見の価値ありすぎの展示も多数。総合監修者の川田伸一郎先生(国立科学博物館 動物研究部)もおっしゃっていましたが、コロナ禍や明るいニュースが少ない昨今、危険な動物たちの生きる技術にスカッとする楽しい展覧会でした。
混雑について
本展は事前予約による日時指定制が導入されています。新型コロナウイルス感染症拡大防止対策として密にならない工夫として広い通路が設定されるなど、結果的に今までの特別展に比べてもゆったりと観覧できると思われます。ただ、東京国立博物館など他の展覧会では日時指定枠が早めにいっぱいになってしまうケースも出ています。この記事を読んで興味を持った読者の方には是非、早めに来館予定を立てることをおすすめします。
大地のハンター展 開催概要
本展は事前予約日時指定制が採用されており、来場者は公式サイトより事前予約日時指定が必要となります。開館時間や休館日、予約方法等の詳細は決定次第、公式サイト等にてアナウンスされるとのことです。
- 展覧会名:特別展「大地のハンター展 ~陸の上にも4億年~」
- 会期:2021年3月9日(火)~6月13日(日) ※会期等は変更になる場合がございます。
- 会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
- 開館時間:9時~17時 ※入場は閉館時刻の30分前まで
- 休館日:月曜日 ※ただし、3月29日(月)、4月26日(月)、5月3日(月・祝)・24日(月)・31日(月)、6月7日(月)は開館
- 入場方法:ご入場されるすべてのお客様は公式サイトより事前予約日時指定)が必要です。
- 入場料:一般・大学生2,000円、小・中・高校生600円(いずれも税込み) ※未就学児は無料。障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料。
- 主催:国立科学博物館、日本経済新聞社、BSテレビ東京
- 協力:神奈川県立生命の星・地球博物館、北九州市立自然史・歴史博物館、京都大学、栗林自然科学写真研究所、群馬県立自然史博物館、東京医科歯科大学、栃木県立博物館、日本蛇族学術研究所、姫路科学館、ミュージアムパーク茨城県自然博物館、目黒寄生虫館、秋田書店、ミマキエンジニアリング、日経サイエンス、日経ナショナルジオグラフィック(順不同)
- お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)03-5814-9898(FAX)
※今後の諸事情により、開館時間や休館日等について変更する場合があります。最新情報は公式サイト等でご確認ください。
公式サイト
取材協力
- 国立科学博物館さま
- 特別展「大地のハンター展」 広報事務局さま
- 記事中の写真及び動画は全て報道内覧会にて編集部が撮影したものです