江戸東京博物館にて、企画展「相撲の錦絵と江戸文化」が2021年7月17日(土)より開催されます。
江戸時代、相撲観戦は庶民の娯楽としてひろまり、プロ力士集団の活躍により18世紀末頃に隆盛を極めます。この頃、時を同じくして黄金期を迎えたのが、多色摺(たしょくずり)の木版画「錦絵」でした。役者絵や美人画の発展にともない、それまでの画一的で素朴な相撲版画から、力士ごとに異なる体形や顔の特徴を捉えた相撲錦絵が登場します。力士の姿や相撲観戦の賑わいを臨場感たっぷりに伝える相撲錦絵は、興行の熱狂を支えた立役者であり、スター力士が人気を誇るためにもなくてはならないものでした。本展では、相撲博物館と国立劇場の協力を得て、相撲錦絵を中心に、江戸の相撲の多様な魅力を紹介します。
展覧会の見所紹介
第1章 黄金期の幕開け
江戸時代、相撲観戦は庶民の楽しみとなります。18世紀末には、強豪力士を格付ける「横綱」が登場し、将軍が江戸城内で相撲を直々に観覧する「上覧相撲が催されました。将軍のお墨付きを得て、相撲の社会的地位は飛躍的に向上します。

その背景には空前の相撲ブームがありました。なかでも世間を沸かせたのが、初の横綱となった二人の力士、谷風梶之助(たにかぜかじのすけ)(1750-1795)とそのライバル小野川喜三郎(おのがわきさぶろう)(1758-1806)です。

勝川春章(かつかわしゅんしょう)(1743-1792)とその一派は、彼らの個性を捉えた似顔絵や取り組みの光景を描き、興行の熱狂を伝えました。谷風や小野川が活躍した天明(てんめい)・寛政(かんせい)年間(1781-1801)、多色摺(たしょくずり)の木版画「錦絵(にしきえ)」もまた、東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)(生没年不詳)や喜多川歌麿(きたがわうたまろ)(1753-1806)といったスター絵師の名が飛び交う黄金期を迎えていました。
第2章 力士と絵師の協奏
役者絵で一家を成した春章の円熟期と、天明・寛政年間(1781-1801)の谷風・小野川の活躍期が重なったことは、浮世絵と相撲の双方にとって幸運でした。勝川派の絵筆は力士にも及び、面貌や表情のみならず、体格や肉付き、土俵入(どひょういり)や取組の姿態にいたるまで、各々の特徴を捉えました。個性あふれる力士の姿が役者絵や美人画と並んで江戸市中を彩り、観衆であふれかえる取組の光景は興行の熱狂を喧伝しました。

東洲斎写楽の約10カ月というあまりに短い作画期も、そのブームと重なっていました。文政年間(1818-1830)に勝川派の絵師が相次いで没すると、役者絵とともに相撲絵も歌川派の独壇場となり、なかでも売れっ子の歌川国貞(1786-1865)は、千数百点にのぼる相撲絵をのこしたといいます。

相撲と錦絵、力士と絵師は、相互に刺激し合い支え合いながら人々を魅了し続けました。
右:不知火諾右エ門 横綱土俵入の図 歌川国貞(初代) 画 1840-1844年(天保11-15) 東京都江戸東京博物館所蔵

第3章 相撲と錦絵と都市・江戸

「江戸の繁華の代表は、年二回の相撲、三座の歌舞伎、五町から成る吉原である。」江戸の繁栄の様子を綴った『江戸繁昌記』の序文で、作者の寺門静軒はそう述べます。

『江戸繁昌記』が書かれた頃、1833年(天保4)10月、それまで各所で行われていた相撲の興行は、両国回向院(えこういん)境内に固定されます。回向院や両国橋、隅田川と相撲の組み合わせが定着し、両国は相撲の町になっていきます。さらに相撲は、興行以外でも、さまざまなかたちで人々の生活に根付いていきました。

相撲にまつわる言葉とイメージは、人々の暮らしに染み渡り、今日に引き継がれています。

開催概要
最新情報については公式ホームページをご確認下さい。
- 会期:令和3年7月17日(土)~9月5日(日)
- 開館時間:午前9時30分~午後5時30分
- ※入館は閉館の30分前まで
- 休館日:7月19日、8月10日・23日
- 会場:東京都江戸東京博物館 常設展示室 5F企画展示室 ※会期中展示替あり
- 観覧料:企画展は常設展観覧料でご覧になれます
- 一般:600円/大学・専門学校生:480円/高校生・中学生(都外)・65歳以上:300円/中学生(都内)・小学生以下無料