- 最終更新:2019年10月11日:会場レポート追加
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上野の森美術館「ゴッホ展」開幕

10月11日(金)に開幕した「ゴッホ展」(上野の森美術館、上野公園)。世界中で今も愛されている画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-90)の人生を大きく変えた「ハーグ派」、そして「印象派」、2つの出会いを主軸とし、約40点のゴッホ作品に加え、マウフェやセザンヌ、モネなど「ハーグ派」と「印象派」を代表する巨匠たちの作品約30点、さらにファン・ゴッホが手紙の中で語った言葉を交えながら、その独自の画風にたどり着くまでの過程を掘り下げて紹介していく展覧会です。
会場レポート
美術館のエントランスを入ってすぐの階段を上り、まずは2階の展示会場から展覧会はスタートします。 「第一部 ハーグ派に導かれて」。1880年、27歳にして画家を志したゴッホはハーグ派との出会いにより、画家としての基礎を学び、それまでの独学から、実際のモデルや風景を描く術を身につけます。そして何よりも、裕福でない農民達の日々の暮らしを描くことで、自らの想いと人生を重ね合わせ、ハーグ派への共感を深めていきました。

そして、1階は「第二部 印象派に学ぶ」の展示会場。1886年、弟テオをたよってパリに移り住んだゴッホは、印象派の画家達との交流の中で、徐々にハーグ派の暗めの色彩から、明るい色彩へと作風を変化させて行きます。ハーグ派、印象派との出会いを経て、その後もゴッホの作風は変化を続け、やがて他に類のない、ファン・ゴッホだけの芸術を作りあげることになります。
- プレス内覧会にて編集部撮影
- ※記事後半に本展の出品作品の画像を大きく紹介しています。
ミュージアムショップ
美しい装丁の公式図録やスヌーピーとのタイアップグッズ、さらにはベビースターラーメンのゴッホ展スペシャルパッケージ、パルコとのタイアップのトートバックやアパレルなど、かなり楽しいグッズが並んでいました。

- プレス内覧会にて編集部撮影
編集後記(記者の感想など)
展覧会によっては通路が狭く設定されることもある上野の森美術館ですが、本展はゆったりとしたレイアウトで、ゴッホの画業の変遷をたどりつつ「ゴッホがゴッホになるまで」を体感できるかと思います。
報道内覧会に非常に多くのメディアが詰めかけたことからもわかるように、2019年後半の注目の展覧会のひとつである本展、なかなかの混雑が予想されます。

写真は報道陣向けのギャラリートークの様子ですが、会場の混雑時の雰囲気が予想できるかと思います。とはいえ、ぜひこの秋押さえておきたい展覧会ですので早めに予定を確保して上野を目指すことをおすすめします!
- 取材ご協力:上野の森美術館さま、ゴッホ展広報事務局さま
- 会場内での撮影は禁止となっていますのでご注意ください。記事内での会場内展示風景及びミュージアムショップの写真については、編集部がプレス用内覧会にて許可を得て撮影したものです。
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展覧会みどころ
「ハーグ派」「印象派」 ─ ゴッホの人生を変えた2つの出会いに焦点
ゴッホは27歳の頃に画家を志し、当初はオランダで「ハーグ派」と交流しながら、暗い色彩で農村風景や静物などを描いていました。目にした風景や事物をデッサンし、それを元に抒情的な光景を描く彼らから、ゴッホは画家としての基礎を身につけます。
その後、パリに出たゴッホは「印象派」と出会い、鮮やかな色づかいが生む効果に驚き、独自の作風を確立していきます。
本展は「ハーグ派」「印象派」との2つの出会いにより、ゴッホ独自の画風がどのようにして生まれたのかを明らかにします。
第一部 ハーグ派に導かれて
- [左] フィンセント・ファン・ゴッホ 《疲れ果てて》 1881年9-10月 ペン、水彩・紙 23.4×31.2cm
P. & N. デ・ブール財団 © P. & N. de Boer Foundation - [中] フィンセント・ファン・ゴッホ 《農婦の頭部》 1885年4月 油彩・カンヴァス 46.4×35.3cm
スコットランド・ナショナル・ギャラリー © National Galleries of Scotland, photography by A Reeve - [右] フィンセント・ファン・ゴッホ 《ジャガイモを食べる人々》 1885年4-5月 リトグラフ、インク・紙 26.4×32.1cm
ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag
ジャン=フランソワ・ミレーなど巨匠たちの作品を模写し、素描の手引書を読むなどしていたファン・ゴッホは、ハーグ派の画家たちとの出会いによって専門的な技術を習得しました。
1881年末から2年ほどを当時の芸術の中心地ハーグで過ごし、特に親戚で画家のアントン・マウフェからは、形態や量感のつかみ方、画材の扱いなどを直接手ほどきされています。また、風景やなにげない日々の暮らしの様子を戸外で描いた彼らにならい、モティーフに対する真摯なとりくみの姿勢を学びました。その画家としての大切な姿勢はファン・ゴッホの中に残り続けます。
- [左] フィンセント・ファン・ゴッホ 《陶器と洋梨のある静物》 1885年9月 油彩・カンヴァス 33.5×43.5cm
ユトレヒト中央美術館 © Centraal Museum Utrecht/Ernst Moritz - [中] アントン・マウフェ 《4頭の牽引馬》 制作年不詳 油彩・板 19.5×32cm
ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag - [右] テイス・マリス 《出会い(仔ヤギ)》 1865-66年頃 油彩・板 14.8×19.7cm
ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag
第二部 印象派に学ぶ
- [左] ポール・セザンヌ 《オワーズ河岸の風景》 1873-74年 油彩・カンヴァス 73.5×93.0cm
モナコ王宮コレクション © Reprod. G. Moufflet/Archives du Palais de Monaco - [中] カミーユ・ピサロ 《ライ麦畑、グラット=コックの丘、ポントワーズ》 1877年 油彩・カンヴァス 60.3×73.7cm
静岡県立美術館 - [右] クロード・モネ 《クールブヴォワのセーヌ河岸》 1878年 油彩・カンヴァス 50.5×61cm
モナコ王宮コレクション © Reprod. G. Moufflet/Archives du Palais de Monaco
1886年の2月、ファン・ゴッホは弟テオをたよってパリに行きます。ここでは同年10月に第8回印象派展が開催され、カミーユ・ピサロやエドガー・ドガに加え、ポール・ゴーギャンやジョルジュ・スーラなど後にポスト印象派と呼ばれることになる若手の画家たちが参加していました。
ファン・ゴッホは彼らとともに制作をし、展示を行うなど交流を深める中でその作風を取り入れていきます。特に原色を対比させた明るい色遣いと、筆触の跡をはっきりと残す描き方は、その後のファン・ゴッホの道を決定的に方向づけました。しかし彼は、ただ印象派を受け入れたのではなく、新たな技術を身につけることで、自分自身の欲求のまま自由に描くことを望みました。
2年後に南仏に移動すると、麦畑や糸杉、オリーヴの木に魅せられ、それらをくり返し描きます。太くうねるような輪郭線、幾重にも原色を重ねた筆遣いによってほかに類の無い、ファン・ゴッホだけの芸術をつくりあげました。
- フィンセント・ファン・ゴッホ 《糸杉》 1889年6月 油彩・カンヴァス 93.4×74cm
メトロポリタン美術館
Image copyright © The Metropolitan Museum of Art.
Image source: Art Resource, NY
- [左から1番目] フィンセント・ファン・ゴッホ 《パリの屋根》 1886年春 油彩・カンヴァス 45.6×38.5cm
アイルランド・ナショナル・ギャラリー © National Gallery of Ireland - [左から2番目] フィンセント・ファン・ゴッホ 《タンギー爺さんの肖像》 1886-87年冬 油彩・カンヴァス 45.5×34cm
ニュ・カールスベア美術館 © Ny Carlsberg Glyptotek, Copenhagen Photo: Ole Haupt - [左から3番目] フィンセント・ファン・ゴッホ 《アニエールのボワイエ・ダルジャンソン公園の入口》 1887年春 油彩・カンヴァス 54.6×66.8cm
イスラエル博物館 Photo © The Israel Museum, Jerusalem by Elie Posner - [左から4番目] フィンセント・ファン・ゴッホ 《麦畑》 1888年6月 油彩・カンヴァス 50×61cm
P. & N. デ・ブール財団 © P. & N. de Boer Foundation
ゴッホ展
- 展覧会公式HP:http://go-go-gogh.jp/
- ※チケット情報他、詳細については展覧会公式HPをご確認下さい。
東京会場:上野の森美術館
- 会期:2019年10月11日(金)~2020年1月13日(月・祝)
- ※12月31日と1月1日は休館
- 会場 : 上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
- 開館時間 : 9時30分~17時
- ※金・土曜は20時まで、入場は閉館の30分前まで
兵庫会場:兵庫県立美術館
- 会期:2020年年1月25日(土)~3月29日(日)
- ※月曜休館(月曜が祝祭日の場合は開館、翌火曜休館)
- 会場 : 兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)