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イギリス海運王の贅沢なコレクションが奇跡の来日
Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)にて4月27日より開催中の「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」。産業革命期に英国随一の海港都市として栄えたグラスゴー出身の海運王ウィリアム・バレル(1861─1958年)が収集した良質のフランス絵画を中心に、スコットランドやオランダ人画家の作品をあわせた絵画73点に加え、同市のケルヴィングローヴ美術博物館よりルノワールやゴッホの絵画7点を展示。永らく本国でしか見ることのできなかった世界屈指のバレル・コレクションが奇跡の初来日を果たす、貴重な機会となります。
会場レポート
Bunkamura オーチャードホール芸術監督・熊川哲也さんがご来場
開幕に先立って行われた報道内覧会にはBunkamura オーチャードホール芸術監督・熊川哲也さんも出席。日本初来日である、ドガの傑作《リハーサル》をじっくりと鑑賞。同作を前に、バレエダンサーを描いたこの作品に出会えて光栄であり、この絵のような木のきしむ音が聞こえてくるようなスタジオは現代にはもはやないので、羨ましい気分がする、生の作品に触れることで、作家の吐息や息吹を感じ作家と対話するのがとても好きだ、と熊川さん。 「買えるなら買いたいですよ!5億くらいなら…冗談ですからね。」など、ユーモアを交え、門外不出の作品に触れた生の感動を語られました。
展覧会場
展示は海運王 ウィリアム・バレルの生涯をなぞるイメージで構成され、部屋の中から戸外、そして海にいたるというテーマに沿った各章構成。
すべて報道内覧会にて編集部撮影
Bunkamura ザ・ミュージアム 上級学芸員 宮澤政男さんによると、バレルのコレクションはダーク系や茶色といった色彩の濃い作品が多いのが特徴です。働いている人や作業をしている人をモチーフにしたものも多く、これはバレル本人がビジネスマンであったことを反映しているともいえるということです。

( Bunkamura ザ・ミュージアム 上級学芸員 )
写真の左の作品
フィンセント・ファン・ゴッホ《アレクサンダー・リードの肖像》
1887年、油彩・板、ケルヴィングローヴ美術博物館蔵
© CSG CIC Glasgow Museums Collection
報道内覧会にて編集部撮影
ドガの幻の作品
展覧会の目玉でもある、知られざるドガの傑作《リハーサル》。 宮澤さんによると、ドガは単体でスケッチした絵をアトリエで合成して作画したそうです。

写真中央: エドガー・ドガ《リハーサル》
1874年頃、油彩・カンヴァス バレル・コレクション蔵
© CSG CIC Glasgow Museums Collection
報道内覧会にて編集部撮影
クールベ《マドモワゼル・オーブ・ドゥ・ラ・オルド》

報道内覧会にて編集部撮影
ウジェーヌ・ブーダン《トゥルーヴィルの海岸の皇后ウジェニー》
お忍びで避暑地に来たナポレオン3世の后、ウジェニー皇后を描いたとされる作品。

1863年、油彩・板 バレル・コレクション蔵
© CSG CIC Glasgow Museums Collection
報道内覧会にて編集部撮影
後半は撮影OK

青系、ピンク系の後、黄色がテーマカラーの最後の展示セクションは一般の人も写真撮影が可能です。
なお、この記事は主催者さまの許可のもとに報道内覧会、広報用の写真で構成されています。
ミュージアム・ショップ
展覧会の図録は2,160円、2種あるTシャツは各3,240円、トートバック各1,944円など、多彩なグッズがラインナップ。バレル・コレクションの「熟成したスコッチ・ウイスキーのような」(宮澤さん)渋い色合いがオシャレ。

次のページでは展覧会のみどころ、門外不出の作品が海を渡れた理由などについて
「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」 展覧会のみどころ
門外不出の作品を日本で見られる理由

( グラスゴー博物館群 額縁専門修復化)
インタビューで熊川哲也さんも言及していましたが、本来、門外不出であるはずのドガ 《リハーサル》をはじめとしたバレル・コレクションが日本で展示できる理由が、グラスゴー博物館群 額縁専門修復化 ソフィー・コスティンさんより明らかにされました。バレルは1944年にその9000点にわたる膨大なコレクションをグラスゴー市に寄贈した際、「絶対に作品を海外に送ってはならない」という契約をしています。海運王ゆえに船旅による作品への危険を誰よりも理解していたからです。
1983年にグラスゴー市は郊外のポロック公園内にコレクションを移し、バレル・コレクション(The Burrell Collection)として一般公開します。同館は現在、改修工事中で2021年春にリニューアルオープンの予定です。この間に日本での本展覧会の開催となるのですが、これが可能になった理由はスコットランド議会の特別立法によります。この特別立法によってバレルとの契約当時の状況を変更することに成功、晴れて英国外への作品の貸し出しが可能になり、海を越えて本展の開催が実現しました。
海運王 ウィリアム・バレル(1861─1958年)とバレル・コレクション
ウィリアム・バレルは1861年に英国、スコットランド の海港都市グラスゴーに9人兄弟の三男として生まれます。15歳で家業の艤装業(各種装備などを船体に取り付ける作業)を手伝い始め、24歳で父親の跡を継ぎます。その後、船舶の売買で大成功し「海運王」と称されることとなります。
当時、英国随一の海港都市として経済成長が著しかったグラスゴーでは、美術品市場も活況となっていました。バレルも少年の頃から美術品に関心を持って収集を始めており、1890年代から1920年代にかけて、グラスゴー出身の画商アレクサンダー・リード*(1854 ─1928年)から作品を購入。5000年に及ぶ古今東西の美術工芸品を収集しました。
1944年、バレルはコレクションのうち数千点の作品をグラスゴー市に寄贈。その条件として、当時深刻な社会問題であった大気汚染の影響が少ない郊外にコレクションの作品を展示すること、また英国外には貸し出さないことが提示されました。
1983年にグラスゴー市は郊外のポロック公園内にコレクションを移し、バレル・コレクション(The Burrell Collection)として一般公開。以降、近代名画を集めた世界屈指のコレクションと称され多くの観光客が訪れています。
同館は現在、改修工事により閉館しているため、英国外への作品の貸し出しが可能になり、海を越えて本展の開催が実現しました。
本展のみどころ
- 世界屈指のコレクション初来日
- 知られざるドガの傑作《リハーサル》初来日
- ゴッホ・ルノワール・セザンヌ・クールベ… 数々の巨匠の作品も出展
バレル・コレクションからの出品作品(73点)について
バレルの出身地・グラスゴーが位置するスコットランドは、イングランドではなくフランスと歴史的に結びついていたため、文化的に見てもフランス美術の影響を受けた画家が活躍していました。そうした画家には、「スコティッシュ・カラリスト*」と呼ばれる4人の画家のひとりでパリの美術学校アカデミー・ジュリアンで学んだサミュエル・ジョン・ペプローや、画家ジャン=フランソワ・ミレーを中心とするバルビゾン派やヤーコプ・マリスに代表されるハーグ派に影響を受けた「グラスゴー・ボーイズ」のひとり、アーサー・メルヴィルが挙げられます。本展ではこうしたスコットランドの画家をはじめ、彼らに影響を与えたミレーやマリスの作品を紹介します。
* スコティッシュ・カラリスト(Scottish Colorist): 印象派やフォービスムの画風を学んだスコットランドの画家の一派。明るく鮮明な色彩を多用する。
ケルヴィングローヴ美術博物館からの出品作品(7点)について
本展ではフィンセント・ファン・ゴッホ作《アレクサンダー・リードの肖像》に加え、バレルと同時代にグラスゴーの海運業で財を成したウィリアム・マキネスが、画商リードから購入した絵画作品6点をあわせて展示します。そのうち3点が日本初公開です。
展示作品(一部)
序章より
英国の海港都市グラスゴーと、海運王と呼ばれ美術コレクションを築いたウィリアム・バレルの人物像やその生涯を当時の写真や、親交のあった画商の肖像画(ゴッホ作)などを通して紹介します。
第一章 身の回りの情景
人物、果物、花など、部屋の中の静謐かつ親密な情景が描かれた作品群。
- [左]エドゥアール・マネ《シャンパングラスのバラ》1882年、油彩・カンヴァス バレル・コレクション蔵 © CSG CIC Glasgow Museums Collection
- [右]アンリ・ファンタン=ラトゥール《春の花》 1878年、油彩・カンヴァス バレル・コレクション蔵© CSG CIC Glasgow Museums Collection
第二章 戸外に目を向けて
家の外、街中、郊外へと戸外に広く目を向けて、その景色や、生活・仕事を営む人々、動物を描いた作品群。
第三章 川から港、そして外洋へ
海運王と呼ばれ、港や海への想いが人一倍強いであろうバレルが選んだ海景画を中心とした水辺の景観の作品群。
開催概要
項目 | 内容 |
---|---|
展覧会名 | 印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション |
開催期間 | 2019/4/27(土)-6/30(日) *2019/5/7(火)、5/21(火)、6/4(火)のみ休館 |
開館時間 | 10:00-18:00(入館は17:30まで) 毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで) |
会場 | Bunkamura ザ・ミュージアム |
主催 | Bunkamura、毎日新聞社 |
協賛・協力等 | [後援]ブリティッシュ・カウンシル [特別協賛]大和ハウス工業株式会社 [協賛]大日本印刷 [協力]日本航空 |
お問合せ | ハローダイヤル 03-5777-8600(8:00~22:00) |
音声ガイドは大塚明夫さんが担当
- 音声ガイドナビゲーター 声優:大塚明夫
- 貸出価格 550円(税込)
入館料
入館料(消費税込) | 当日 | 団体 |
一般 | 1,500円 | 1,300円 |
大学・高校生 | 1,000円 | 800円 |
中学・小学生 | 700円 | 500円 |
- 団体は20名様以上。公式サイトから申込み
- http://www.bunkamura.co.jp/group_visits/
- 学生券をお求めの場合は、学生証のご提示をお願いいたします。(小学生は除く)
- 障害者手帳のご提示で割引料金あり。詳細は窓口でお尋ねください。
チケット取扱いは、Bunkamura ザ・ミュージアム、Bunkamuraのチケットセンター、インターネット(MY Bunkamura)、主要プレイガイド。 ※詳細は公式サイトをご確認ください。
展覧会公式サイト

他会場巡回情報
福岡県立美術館
- 2018/10/12(金)~12/9(日)

愛媛県美術館
- 2018/12/19(水)~2019/3/24(日)