[会期終了]「クリムト展 ウィーンと日本 1900」会場レポート(東京都美術館)

2019年4月22日

投稿:ミュージアムズ編集部

報道内覧会にて編集部撮影

※会期終了につき、画像の表示を終了しています。

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過去最大級、待望の「クリムト展」がついに開幕 
「クリムト展 ウィーンと日本 1900」

「クリムト展 ウィーンと日本 1900」(東京都美術館)が2019年4月23日より開幕します。傑作《ユディトⅠ》など過去最多のクリムト油彩画が集結。過去最大級、待望の「クリムト展」となります。

日本国内でも展覧会開催を希望する声は耳にしますが、クリムトは遅筆なうえ、作品がナチス・ドイツに接収されたり、戦火で焼失したりするなど歴史の波に翻弄され、現存する作品が多い作家とは言えません。また建物の天井画や壁画など、現地を訪れなくては実物を見られない作品も多々あります。没後100年を記念して開催する本展は、クリムト作品をまとめて見ることのできる貴重な機会といえます。会期は7月10日(水)まで。

展覧会の見どころ

  • 過去最多25点以上のグスタフ・クリムトの油彩画を中心に紹介
  • 東京では約30年ぶりとなる、待望の大規模展
  • クリムト没後100年(2018年)、日本オーストリア友好150周年(2019年)記念の展覧会
  • 全長34メートルにおよぶ壁画《ベートーヴェン・フリーズ》の精巧な複製も展示
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グスタフ・クリムト(1862~1918)

グスタフ・クリムト(1862~1918)は、19世紀末から20世紀初頭のウィーンで活躍した画家です。代表作《接吻》はオーストリアの芸術を代表する国宝的作品として位置付けられ、今や国外への出品は許されない作品となっています。写実的でアカデミックな画風から出発したクリムトは、やがて金箔を多用する「黄金様式」の時代を経て、装飾的で抽象的な色面と人物を組み合わせた独特の画風を確立、ウィーン・モダニズムの旗手として活躍しました。無垢な少女、魔性の女、運命の女…女性の様々な魅力を描き出した華麗な女性像は、国内外で圧倒的な人気を誇ります。

展示会場について

開幕に先立って行われた報道内覧会より、展示の様子をご紹介します。

報道内覧会にて編集部撮影
  • 上記9点、全て報道内覧会にて編集部撮影

報道陣の向こうに見えるのが 《ユディトⅠ》

かなり大勢の報道陣がつめかけており、内覧会は非常に盛況でした。やはりクリムトとその作品への注目度は高く、会期中も混雑が予想されます。

  • [各写真の中央奥の作品] グスタフ・クリムト《ユディトⅠ》 1901年 油彩、カンヴァス 84×42cm ウィーン、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館  © Belvedere  報道内覧会にて編集部撮影

《ベートーヴェン・フリーズ》

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グスタフ・クリムト《ベートーヴェン・フリーズ》(部分)1984年
(原寸大複製/オリジナルは1901-1902年) 216×3438㎝
ウィーン、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 © Belvedere, Vienna
報道内覧会にて編集部撮影
  • [左][右]グスタフ・クリムト《ベートーヴェン・フリーズ》(部分)1984年(原寸大複製/オリジナルは1901-1902年) 216×3438㎝
    ウィーン、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 © Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll

全長34メートルを超える壁画で、クリムトが40歳の頃に手がけた大作です。黄金の甲冑で武装した騎士が幸福を求めて敵に向かい、楽園にたどり着くまでの旅路が絵巻物のように展開します。本展では1984年に製作された精巧な原寸大複製を通じ、その壮麗さと迫力を体感できます。

物販エリア

  • 報道内覧会にて編集部撮影

出口エスカレーター付近にはフォトスポットも

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報道内覧会にて編集部撮影

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[会期終了]「クリムト展 ウィーンと日本 1900」会場レポート(東京都美術館) – ススミカマガジン・ミュージアムズ

会場レポート追加:「クリムト展 ウィーンと日本 1900」(東京都美術館)の一番…
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「クリムト展 ウィーンと日本 1900」 展示作品

クリムト作品の世界的殿堂ともいえるウィーンのベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館の所蔵作品を中心に、クリムトの画業の変遷と彼とともに活躍した同時代の画家たちの作品が紹介されます。「黄金様式」の時代の代表作のひとつ《ユディトⅠ》など、日本では過去最多となる25点以上のクリムトの油彩画が揃う他、クリムトが手がけた全長34mにも及ぶ壁画《ベートーヴェン・フリーズ》の精巧な複製も来日。ウィーンの分離派会館での展示を再現します。また、19世紀末のウィーンで紹介された日本の工芸品や絵画を通し、クリムトが受けたジャポニスムの影響にも迫ります。

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ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館(外観)
© Belvedere, Vienna, Photo: Ouriel Moegnestzern

本展は、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館の監修のもとで企画構成されています。同館は18世紀初頭のウィーンに建てられた、バロック建築の宮殿内にある美術館です。

クリムト最大の絵画のひとつ《女の三世代》

縦横約170cmと、壁画などを別にすればクリムト最大の絵画のひとつで、完成度も極めて高い作品、日本では初公開(※ローマ国立近代美術館調べ)となります。

《女の三世代》は、クリムトが深い関心を寄せた生命の円環をテーマに、人間の一生を幼年期、青年期、老年期の三段階に分けて寓意的に表す作品です。安らかに眠る幼子を優しく胸に抱く、若く美しい裸体の女性は、夢見るかのように目を閉じています。頭部から身体をつたって流れるように装飾的なモティーフで飾られた姿は、生命の美しさ、輝きを体現しているかのようです。一方、背後には年老いた女性がうなだれ、老醜を恥じるように手で顔を覆っています。3人の背後に広がるのは壁、あるいは屏風のように立ち上がる灰色と黒の平面で、生あるものに不可避の死あるいは滅びの象徴的表現とみることもできるでしょう。(プレスリリースより)

《ユディトⅠ》《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》

  • [左]グスタフ・クリムト《ユディトⅠ》 1901年 油彩、カンヴァス 84×42cm
    ウィーン、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 © Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll
  • [右]グスタフ・クリムト《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》 1899年 油彩、カンヴァス 252×55.2cm
    オーストリア演劇博物館 KHM-Museumsverband

《ユディトⅠ》はクリムトの「黄金様式」の時代の代表作の一つで、油彩画に初めて本物の金箔を用いた作品とされます。額縁もクリムト自身の手によるもの。

1897年のウィーン分離派結成の直前に構想された作品《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》では、伝統的な手法を用いながらも、妥協せずに真実を志向し大衆の批判には迎合しない、反骨の芸術への指示を表明しており、クリムトたちが掲げた新たな芸術運動の理想をはっきりと示しています。

《ヘレーネ・クリムトの肖像》《オイゲニア・プリマフェージの肖像》

  • [左]グスタフ・クリムト《ヘレーネ・クリムトの肖像》 1898年 油彩、厚紙 59.7×49.9cm
    ベルン美術館(個人から寄託) Kunstmuseum Bern, loan from private collection
  • [右]グスタフ・クリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》 1913/1914年 油彩、カンヴァス 140×85cm
    豊田市美術館

《ヘレーネ・クリムトの肖像》はクリムトの弟エルンストの娘ヘレーネが6歳の時に描かれた肖像画。襞(ひだ)のたっぷりほどこされた白いドレスが、流れるような筆致で絵画的に描かれているのとは対照的に、当時としては珍しい、おかっぱ頭の横顔は、はっきりとした輪郭を作り出しています。

《オイゲニア・プリマフェージの肖像》はクリムトの後期肖像画の特徴を表す重要な一点で、東洋風のモチーフを伴う抽象的な背景に、華やかな衣装の女性が配されています。

《赤子(ゆりかご)》《アッター湖畔のカンマー城III》

  • [左]グスタフ・クリムト《赤子(ゆりかご)》 1917-1918年 油彩、カンヴァス 110.9×110.4cm
    ワシントン、ナショナル・ギャラリー© National gallery of Art, Washington, Gift of Otto and Franciska Kallir with the help of the Carol and Edwin Gaines
  • [右]グスタフ・クリムト《アッター湖畔のカンマー城III》 1909/1910年 油彩、カンヴァス 110×110cm
    ウィーン、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 © Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll

クリムト晩年の作品《赤子(ゆりかご)》。豊かな色彩を用いた装飾的な画面はフォーク・アートから、布の模様は日本の着物からインスピレーションを得ているとも考えられます。

《アッター湖畔のカンマー城III》では建築と自然が対比的に描かれるだけでなく、現実の風景と水面に反射するイメージ、あるいは均一な構図と細やかな筆跡が対照をなし、クリムトが好んで用いた正方形の画面が緻密に構成されています。

「クリムト展 ウィーンと日本 1900」

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クリムト展チラシ

開催概要

項目内容
展覧会名「クリムト展 ウィーンと日本 1900」
会期2019年4月23日(火)~7月10日(水)
休室日5月7日(火)、20日(月)、27日(月)、6月3日(月)、7月1日(月)
開室時間午前9時30分~午後5時30分
※金曜日は午後8時まで(入室は閉室の30分前まで)
会場東京都美術館 企画展示室
主催東京都美術館、朝日新聞社、TBS、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
後援オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム
お問い合わせ03-5777-8600(ハローダイヤル)

観覧料

項目当日団体
一般1,600円1,400円
大学生・専門学校生1,300円1,100円
高校生800円600円
65歳以上1,000円800円

巡回展について

2019年7月に愛知県にて巡回展が開催されます。

  • 会期:2019年7月23日(火)~10月14日(月・祝)
  • 会場:豊田市美術館(愛知県豊田市)

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