「洛中洛外図屛風」の極小表現まで精緻に拡大 東京国立博物館とNHKによる 「みんなの8K文化財」プロジェクトが発足

2021年3月16日

投稿:ミュージアムズ編集部
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東京国立博物館xNHK共同研究「8K文化財プロジェクト」記者発表会を取材

東京国立博物館とNHKによる共同研究プロジェクト「みんなの8K文化財」が発足。これは、東京国立博物館が所蔵する文化財に注目、8K技術や最先端のスキャナー、フォトグラメトリ技術を使い、これまでの映像体験をはるかに超えた超高精度の3DCG=「8K文化財」を制作するというもので、デジタルツールとの組みあわせにより誰もが文化財を楽しみ「心の豊かさ」につながるような新時代の美術鑑賞のあり方を探求、その成果を放送番組やイベントなどで発表していくというものです。編集部では3月15日に東京国立博物館にて開催された記者発表会を取材しました。

8K文化財のデモンストレーションの様子、超拡大表示されているのは、岩佐又兵衛 洛中洛外図屛風 舟木本(国宝 江戸時代 17世紀) 編集部撮影

肉眼では見ることが不可能な、文化財の細かい部分すら鑑賞できる

超高精度の3DCGである「8K文化財」。プロジェクトは昨年9月より開始され、第1弾は放送番組として制作されます。最初に選ばれたのは東京国立博物館を代表する文化財である「洛中洛外図屛風」と「遮光器土偶」。

文化財から最新の3Dスキャナーによって正確な形状モデルを作成、屛風では8192×8192ピクセルの画像を210枚も貼り合わせることで作られるこの「8K文化財」は、高速計算処理を行うソフトウェアによってリアルタイム演算で表示され、ゲームのようにコントローラーの操作で好きな角度や距離から眺めることが可能です。超拡大表示や土偶の内部構造といった肉眼で見ることが難しい部分を見ることができるようになるため、テレビカメラでは撮影できなかった迫力ある画像を、実物に近い感覚で鑑賞できる他、デジタルアーカイブとして利用することで、研究時も含めて実物を取り出すリスクを低減でき、文化財の保護という面でもメリットがあるということです。

2022年には東京国立博物館創設150周年記念企画として「みんなの8K文化財」プロジェクトの研究成果集大成企画も

この「みんなの8K文化財」プロジェクト、今後は年間三件程度をNHKの番組でその成果を発表していく予定です。また、東京国立博物館創設150周年を迎える2022年には東京国立博物館、NHK両者によるこの共同研究の集大成となる企画を研究成果として実施、展開するということです。

記者発表会に登壇した井上洋一・東京国立博物館 副館長は「この8K文化財による新しい鑑賞体験をきっかけとして、多くの人々が文化財に目を向け、そして実物を見るために博物館に足を運んでもらえれば」とコメントしました。

実際に記者も体験 8K文化財の精緻な世界に驚愕

記者発表会では、実際に8K文化財を体験できるデモンストレーションも行われました。

8K文化財のデモンストレーションの様子、超拡大表示されているのは、岩佐又兵衛 洛中洛外図屛風 舟木本(国宝 江戸時代 17世紀) 編集部撮影 ※この記事のみでの限定公開

平成館ラウンジに設置された巨大スクリーンにリアルタイム描画された国宝「洛中洛外図屛風 舟木本」。2700人を超える人物たちの表情や絵のタッチまでが、はっきりとわかります。記者説明でスペック自体は理解したつもりでしたが実際に見ると圧巻の一言。

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8K文化財のデモンストレーションの様子、超拡大表示されているのは、岩佐又兵衛 洛中洛外図屛風 舟木本(国宝 江戸時代 17世紀) 編集部撮影

重箱を囲んで宴会を開く人々ですが、女性が片膝を立てて座っています。床が板張りだったため、この時代では女性の片膝立て座りやあぐらは一般的でした。女性の正座は、庶民にも畳が普及する江戸時代以降の習慣なのだそうです。このように、肉眼の鑑賞ではかなり気がつくのが難しい細かな点も8K文化財では容易に見ることができます。

土偶を下部から眺めることも

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8K文化財のデモンストレーションの様子、青森県つがる市木造亀ヶ岡出土 遮光器土偶(重要文化財 縄文時代 晩期 前1100年から前400年) 編集部撮影

こちらは立体作品を8K文化財化したもの。子供にも人気が高い「遮光器土偶」です。こちらも360度方向に回転、拡大が可能で、通常は見ることが不可能な土偶の内部まで表示できることができます。今なお残る3000年前の赤い彩色、鳥の羽や縄などによる繊細な文様などもくっきりと見ることができました。

BS8Kにて3月20日(土)放送「見たことのない文化財」

8K文化財を番組化した「見たことのない文化財」は2012年3月20日(土)19時よりにBS8Kにて放送されます。また4月7日(水)、14日(水)、21日(水)にはBSプレミアムにて放送されます。

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記者発表会のスライド 編集部撮影
  • 「遮光器土偶」 2012年3月20日(土) 19:00~
  • 「洛中洛外図屛風 舟木本」 同日 19:30~
  • 「特別編 百済観音 (法隆寺 蔵)」 同日 20:30~

NKK BS8K

東京国立博物館の7月からの特別展「聖徳太子と法隆寺」でも8K文化財が登場

2021年7月より開催される東京国立博物館の特別展、聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」にて、本プロジェクトの研究成果である8K文化財を鑑賞できるということもあわせて発表されました。同展では法隆寺所蔵の国宝「救世観音像」、国宝「百済観音像」の8K文化財を体験できるそうです。

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リソースと取材ご協力

  • 東京国立博物館さま、8K文化財プロジェクト プレスリリース