「松方コレクション展」を見てきた(国立西洋美術館)※会期終了

2019年6月11日

投稿:ミュージアムズ編集部
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「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」6月11日(火)より開催中

※会期終了にともない画像の表示を終了しました。

「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」が2019年6月11日(火)より国立西洋美術館(上野公園)にて開催されます(会期は9月23日(月・祝)まで)。この展覧会は松方幸次郎が1910-20年代にパリやロンドンで蒐集した約3000点の西洋美術コレクションであり、国立西洋美術館の礎となった松方コレクションの名作とともに、その波乱と激動の歴史を明らかにするというものです。編集部では開幕に書きがけて行われた報道内覧会を取材してきました。

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松方幸次郎と松方コレクションについて

神戸の川崎造船所(現・川崎重工業株式会社)の初代社長などを努めた松方幸次郎(1866-1950)は、1916から1927年頃のロンドンやパリで大量の美術品を蒐集します。「日本の芸術家、人々のために美術館を作りたい」という想いにより買い集められた美術品は、現在では特にマネ、ゴーガン、ゴッホ、ロダンなど近代フランス美術の優品で知られ、そのコレクション数はパリで買い戻した浮世絵も含めると1万点を超えていましたが、関東大震災、昭和金融恐慌とといった時代の荒波の中、松方の美術館建設計画は頓挫、コレクションも散逸していきます。

  • [左]フランク・ブラングィン《共楽美術館構想俯瞰図、東京》 水彩・鉛筆、紙 国立西洋美術館
  • [右]国立西洋美術館

コレクションの一部は戦時下の接収を経て、戦後、フランス政府から日本政府へ寄贈返還され、これを保管展示するための美術館として1959年、国立西洋美術館が設立されます。ときに「幻のコレクション」とも呼ばれる松方コレクションですが、ロンドンで消失した作品のリストや、行方知れずであった≪睡蓮、柳の反映≫の発見など、近年の調査によりその全容があらわれ、新たな注目が集まっています。

本展では松方コレクションとは本来どのようなものだったのか、どのように形成、散逸したのかを国内でも知られていなかった旧蔵品の他、美術作品とともに歴史的資料も公開することによって明らかにしていきます。

  • [左]フランク・ブラングィン《松方幸次郎の肖像》 1916年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(旧松方コレクション)
  • [右]クロード・モネ《睡蓮》 1916年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(松方コレクション)

世界に散逸した名作の数々、夢の再会

オルセー美術館の至宝・ゴッホ《アルルの寝室》などの傑作をはじめ、世界各地に散逸した松方旧蔵の名作が集結。 夢のコレクションの壮大なスケール、そして ロンドン、パリでの松方の蒐集の足跡をたどりつつ、時代の荒波の中で散逸、焼失、接収…と苦難の歴史を歩んだコレクションの数奇な運命を最新の研究成果をたどることが出来ます。

会場写真

  • このセクションの写真は全て報道内覧会にて編集部撮影
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写真奥の壁面: ローデヴェイク・ファン・スホール/ピーテル・スピーリンクス(カルトン制作)《神話の一場面》 18世紀初頭 国立西洋美術館(株式会社日本興業銀行より寄贈)
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通路の奥にモネ “幻の睡蓮” が

モネ“幻の睡蓮” 修復後、初公開

松方が生前のモネを訪問、直接譲り受けた作品であり、長年行方がわからなかった”幻の睡蓮”。 2016年にパリ・ルーヴル美術館で発見され、国立西洋美術館に寄贈されたことで大きな話題となったモネ《睡蓮、柳の反映》が現存部分の修復を経て、初めて公開となりました。約60年ぶりに発見された同作品は画布の半分近くが欠損しており、作品の全体像が確認できるのは欠損前に撮影された白黒写真のみ。

国立西洋美術館 研究員の 邊牟木直美 氏によるとこれほどの破損を修復するためには本来は2年から3年かかるのが通常ですが、本展にあわせて1年間で作業する必要がありました。修復の進捗はミクロン単位であり、小さな絵画でも本作のように非常に大きいサイズのものでもそのスピードは変わらないため、人海戦術で作業をすすめたということです。

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  • 報道内覧会でのギャラリートークで “幻の睡蓮” の修復作業について語る国立西洋美術館 研究員の 邊牟木 直美 氏
  • 写真手前:クロード・モネ《睡蓮、柳の反映》 1916年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(旧松方コレクション)

展覧会場のミュージアムショップ

展覧会図録(2,700円)の他、《睡蓮》エコバック(収納ポーチツキ、1,500円)、神戸風月堂 ミニゴーフル2缶セット(1,000円)、ゴンチャロフ チョコレート(900円)など、本展のために作られたオリジナルグッズ。※全て税込金額

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記者の感想など

展示されている現存部分は、モネの筆跡が生き生きと見て取れますが、日本に届いた時は元の絵がわからないほど黒ずんだり白くなったりと、何層にもカビやほこりなどが付いた状態だったそうです。修復チームが絵を傷めないように汚れを取り除くという、気の遠くなるような作業を注意深く進めてきた結果ということで、これを1年という短期間で行う、技術のスゴサも見どころの1つです。
残った部分の絵の素晴らしさを見ると、詫びさびにも通じるものがあるような、それぞれ見る人の心によって何か語りかけてくるような気がします。

作品紹介

  • [左] ジョン・エヴァリット・ミレイ《あひるの子》1889年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(旧松方コレクション)
  • [中]ジョヴァンニ・セガンティーニ《羊の毛刈り》 1883-84年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(旧松方コレクション)
  • [右]リュシアン・シモン《墓地のブルターニュの女たち》 1918年頃 水彩・グアッシュ、紙 国立西洋美術館(松方コレクション)
  • [左]ウジェーヌ=ルイ・ジロー《裕仁殿下のル・アーヴル港到着》 1921-22年 油彩、板 国立西洋美術館(松方コレクション)
  • [右]オーギュスト・ロダン《考える人》 1881-82年 ブロンズ 国立西洋美術館(松方コレクション)撮影:上野則宏

左より

  • クロード・モネ《舟遊び》 1887年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(松方コレクション)
  • エドゥアール・マネ《自画像》 1878-79年 油彩、カンヴァス 石橋財団ブリヂストン美術館/石橋財団アーティゾン美術館
  • エドガー・ドガ《マネとマネ夫人像》 1868-69年 油彩、カンヴァス 北九州市立美術館
  • エドゥアール・マネ《ブラン氏の肖像》 1879年頃 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(旧松方コレクション)
  • [左]ピエール=オーギュスト・ルノワール《アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)》 1872年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(松方コレクション)
  • [右]ピエール=オーギュスト・ルノワール《帽子の女》 1891年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(松方コレクション)

展覧会概要

展覧会名称国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展
会期2019年6月11日(火)ー9月23日(月・祝)
会場国立西洋美術館(上野公園)
開館時間午前9時30分~午後5時30分 金・土は午後9時まで
※入館は開館の30分前まで
休館日毎週月曜日、および7月16日(火)は休館。
ただし、7月15日(月・祝)、8月12日(月・祝)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)は開館。
主催国立西洋美術館、読売新聞社、NHK,NHKプロモーション
協賛損保ジャパン日本興亜、NISSHA
協力日本航空、西洋美術振興財団

観覧料

観覧料一般大学生高校生
当日1,600円1,200円800円
団体1,400円1,000円600円

団体は20名以上/中学生以下は無料/心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)/7月20日(土)~8月6日(火)は高校生無料観覧日(入館の際に学生証をご提示ください)

展覧会公式サイト

チケット等の詳細については展覧会公式サイトもご参照ください。

松方コレクション展

「松方コレクション」展のホームページです。本展に関するニュースや企画特集などを紹…
artexhibition.jp

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