サンシャインシティ(池袋)にある古代オリエント博物館で、2023年度秋の特別展「おまもりとハンコとコイン -古代オリエントの偉大なる小さきものたち-」が開催されます。同館はサンシャインシティオープンと同じ1978年、日本で最初の古代オリエント地域専門の博物館として開館。西アジア、エジプト地域を中心として、旧石器時代からサーサーン朝時代までの資料約5,000点、及びシリア出土品を多数収蔵しています。会期は9月23日(土・祝)~11月19日(日)。

展覧会のみどころと展示品の一部を紹介
古代エジプトのおまもり(スカラベや護符)、メソポタミアのハンコ(円筒印章やスタンプ印章)、そして古代オリエントに生まれ、東西にまたがって流通したコインは、小さな工芸品ではあるものの、その時代の政治、宗教、経済、人々の日常生活など、当時の社会について莫大な情報を我々に伝えてくれます。会場は博物館の展示スペース約半分を使用し、同館所蔵資料を中心に約300点を展示。初展示の資料もあり、”それぞれの展示物は小さいながらも見応えがある特別展”となります。
《ハヤブサ頭のスカラボイド》
特別展主担当の田澤 恵子さんのイチオシは「ハヤブサ頭のスカラボイド」。

エジプトのお土産品としてなじみ深いスカラベ。これは、古代エジプトで実際に作られ、人々が身につけたり、ミイラの包帯の中に巻き込んだりして再生や復活への祈りを紡いだ小さなおまもり「スカラベ」にちなんだものです。このおまもりはスカラベ甲虫(コガネムシ科の昆虫で、ラテン語の学名から「スカラベ」と呼ばれる)の姿を象(かたど)ったもので、底面(腹部側)には、様々な文字や図像や模様が刻まれています。時代や制作地によって底面の文様や用途には様々な特徴がありますが、私の推しスカラベは、背面が本来のスカラベではなく、他の動物や人間の頭部になっているスカラボイドと呼ばれるもので、ハヤブサの頭があしらわれています。紀元前664年~紀元前332年の間に作られたデザインであることがわかっています。本展では、この他に初展示のスカラベもご紹介いたします。(
特別展主担当 田澤 恵子さん)

《円筒印章》
特別展副担当の津村 眞輝子さんのイチオシはこちらの《円筒印章》です。

検印、署名といったハンコの機能は古代も現代も同じですが、大きく違うのは古代メソポタミアのハンコは粘土に押していたことです。特に興味深いのは円筒印章で、たとえばこの円筒印章は径がたった9mmしかないのですが、転がすことで一周約3cmの印面が粘土に浮かび上がります。転がし続ければエンドレスに続き、また中心の孔に紐を通して身につけることもできます。実に画期的なアイデア商品といえます。筒型の側面に細かい文字や図柄を彫るには一流の職人技なくしてはできず、円筒印章を作る職人は人類史上初の近視になった人々だともいわれます。本展では、絵解きや拡大鏡などを用いて楽しんでもらえる展示にする予定です。
(特別展副担当 津村 眞輝子さん)
他にも「古代オリエントの偉大なる小さきものたち」が多数出品。
第1章 おまもり

人々が、子孫繁栄や豊穣多産、家内安全や無病息災、そして死後の安寧を願う気持ちは今も昔も変わりません。古代エジプトや古代メソポタミアの人々が、そんな想いをこめて作った数々のおまもりが展示されます。彼らは、人間の足や心臓など身体の一部やウサギ、ウシ、サカナ、ヒツジなど身近な動物たちの姿、そして神話を基にした神々の姿を象ったおまもりを石やファイアンス(古代の焼き物)、貝などで作りました。そして、それらを身につけて持ち歩いたり、墓に副葬することでそのご利益に与ろうとしました。僅か1~2㎝ほどの小さなおまもりが、当時の人々の世界観を今に伝えてくれます。初展示のスカラベも登場します。

第2章 ハンコ
今から8000年前頃から古代メソポタミアで使われはじめたハンコが紹介されます。ハンコ自体が動物の形をしたスタンプ印章や、粘土に転がす円筒印章、インダス式スタンプ印章、赤や白のキレイな石に彫り込んだペルシア(現:イラン)の小さなハンコなど、さまざまな時代、地域のハンコを展示。孔が開いたものが多く、紐を通して身につけたり、中にはお守りの役割も兼ねていたハンコもありました。石や貝などで作られ、手の平に乗る小さなハンコに、幾何学模様や動植物文様、神話、文字などが丁寧に彫り込まれています。

第3章 コイン
前7世紀頃からオリエントで発展した金、銀、銅などのコインは、金属の純度や重量を保証した印が表と裏に刻印されました。表に発行者の顔、裏に信奉する神を刻印する習慣は今のヨーロッパのコインにもつながっています。発行地や発行者の文字、神やシンボルなどが刻まれたコインは、小さいながら当時の政治、宗教、文字、そして美術表現など様々な情報を伝えてくれます。さまざまな時代・地域の金貨、銀貨、銅貨が紹介されます。

勝利の女神“ニケ”を刻んだコイン
アフガニスタンからパキスタン、インド北西部を支配したギリシア人の王朝が発行したコイン。ギリシア語・ギリシア文字だけでなく、地元のプラークリット語・カローシュティー文字で「勝利王アンティマコスの」という同じ内容を表裏に記しています。図柄はギリシアの勝利の女神“ニケ”が棕櫚の葉を持つ姿と、裏には騎馬姿の王が表されている。このような二カ国語表記のコインは文字の解読に一役買いました。

リソース
- 株式会社サンシャインシティ プレスリリース
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000800.000020364.html
開催概要
詳細および最新の情報は公式サイトの展覧会ページをご確認ください。
- 2023年度 秋の特別展「おまもりとハンコとコイン -古代オリエントの偉大なる小さきものたち-」
- 9月23日(土・祝)~11月19日(日)
- 古代オリエント博物館の公式サイト:https://aom-tokyo.com/