国立歴史民俗博物館にて、特集展示「黄雀文庫所蔵 鯰絵のイマジネーション」が、2021年7月13日(火)~ 9月5日(日)の期間、開催されます。本展は、初公開の黄雀文庫所蔵の鯰絵コレクション約200点を通じ、未曽有の災害に遭いながらも、諧謔の精神でたくましく乗り越えようとした江戸の民衆の豊かな想像力の一端に触れようとする企画です。黄雀文庫は、浮世絵研究者で収集家としても知られる佐藤光信氏(平木浮世絵財団理事長)の個人コレクション。錦絵や絵本など江戸時代の浮世絵を中心とした多彩な内容を誇り、その鯰絵コレクションは、質・量共に国内最大級となります。
展覧会みどころと作品紹介
・民衆は大地震の元凶に何を見、そしてそれを防ぐものとして何に期待したのか?
・大津絵の画題や歌舞伎の一場面をパロディー化した手並みの鮮やかさ
・逆境にも負けず、諧謔の精神で乗り越えようとする民衆のエスプリを見る
・鯰絵の中に民衆の世相へのちくりとした風刺を見る
・従来あまり知られていなかった鯰絵出版のメカニズム解明を試みる
江戸時代は多くの地震に見舞われたことが知られています。とくに幕末には大きな地震が相次いで発生しています。弘化4(1847)年の善光寺地震は江戸の人々にも大きな関心をもって受け止められました。
嘉永7(1854)年には安政東海地震、安政南海地震と巨大地震が連続し、翌安政2年10月2日(1855年11月11日)に起きた安政江戸地震は江戸の町に甚大な被害をもたらしました。その直後から、被災状況を伝える瓦版などさまざまな刷物が売り出されました。なかでも、地震の元凶とされた地中の大鯰をモティーフとし、今日「鯰絵」と呼ばれる版画は、さまざまな主題と趣向を取り入れ、同年12月に当局から禁止されるまでの間、200種を越えるものが発行されたといわれています。
鯰絵には地震に対する怖れや震災後の世相に対する風刺、あるいは世直しへの願望など、民衆のさまざまな思いが投影されています。
傾城あだなの焚 安政2(1855)年 黄雀文庫蔵
歌舞伎「傾城浅間獄(けいせいあさまがたけ)」のパロディー。 巴之丞が愛人の傾城奥州と取り交わした起請を焼くと、煙中に奥州の霊が現れて巴之丞に恨みを言う有名な場面。巴之丞ならぬ鯰(羽織の紋は瓢箪で「巴」をつくる)が、出現した傾城の幽霊(被災した吉原で落命)に驚く様子。

鯰と要石 安政2(1855)年 黄雀文庫蔵
鹿島明神の留守を預かる恵比寿の夢の中で、大鯰が暴れて町が炎に包まれる様子を描いている。

鯰退治 安政2(1855)年 黄雀文庫蔵
まな板の上に載せられ、被災者たちに料理されようとする大鯰。四角い枠内は、地震除けの護符が書かれている。

開催概要:特集展示「黄雀文庫所蔵 鯰絵のイマジネーション」
開館日・開館時間が変更になる場合があります。最新の情報については公式サイトをご確認ください。
- 展覧会名:特集展示「黄雀文庫所蔵 鯰絵のイマジネーション」
- 会期:2021年7月13日(火)~ 9月5日(日)
- 会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A
- 休館日:毎週月曜日(8月9日[月・休]は開館)
- 開館時間:9:30 ~ 17:00(入館は16:30まで)
- お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)