東京都指定有形文化財「百段階段」(ホテル雅叙園東京館内、目黒)にて、企画展「大正ロマン×百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界~」が3月25日(土)より開催中です。※会期は2023年6月11日(日)まで。

昨年4月に開催された「大正ロマン×百段階段」は、初開催ながらSNS上でも話題を呼んだ大人気企画展。2023年は「文豪が誘うノスタルジックの世界」いうサブタイトルがつき、昨年以上に没入感のある世界観をもった展覧会として帰ってきました。
今回は谷崎潤一郎、太宰治など、文壇を彩った文豪が紡いだ物語を、現代の人気イラストレーターが独自の感性で表現する「乙女の本棚」(立東舎)とコラボレーション。明治から昭和初期に発表された物語6作品をセレクトし、文化財「百段階段」の各部屋ごとの立体展示により、物語の世界を三次元で愉しむという趣向です。

会場レポートピックアップ
本記事では会場取材から前半ハイライトを3つピックアップしました。見どころが多すぎる「大正ロマン×百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界~」。ぜひ動画版記事とあわせて御覧ください。
曲がり角には何かが起こる?今回はユニークなレイアウトに


今回は室内に順路がついたレイアウトが採用されています。「順路の曲がり角には何かが起こる」というコンセプトの展示レイアウトとのことで、角を曲がると、物語の展開に合わせて展示風景も一気に変化。来場者は、新鮮な驚きとともに、物語の世界に深く入り込んでいきます。

《十畝の間 萩原 朔太郎+しきみ 『猫町 』》では、前半の華やかなかわいらしい町のイメージの展示が順路の曲がると一転。作品のキャッチコピー「猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかりだ」のとおり、猫の大集団が登場します。



猫好きの人は、最初の部屋から当分出られそうもありませんね…。
自分自身が写る鏡
こちらは《漁樵の間 中島 敦+ねこ助 『山月記』》。

漁樵の間の豪華な迫りくるようなしつらえと、月明かりのような照明に圧倒されます。漁樵の間では、詩の才能にとらわれ、虎となってしまう『山月記』の主人公の言葉を受けて、来場者は竹林の中の鏡に自らの姿を映し出すこととなります。


リアルと物語世界の交錯
《草丘の間 太宰 治+紗久楽さわ 『葉桜と魔笛』》では一転して、広々とした空間に作品世界が散りばめられます。

作品のキャッチフレーズ「桜が散って、このように葉桜のころになれば、私は、きっと思い出します。」のとおり、部屋に入ると、作中の姉妹が。姉の方は窓の方を向いています。実際に、草丘の間は季節になると葉桜を窓から眺められるそうです。



物語のキーになる「軍艦マーチの口笛」をモチーフにしたBGMが、なんとも言えない、せつない感動を盛り上げます。BGMは今回もヨダタケシが担当、6部屋の会場内音楽をあたかも新作ショートフィルムが上映されているかのように演出しています。
文豪が誘うノスタルジックの世界へ

展示後半は、《静水の間 小川未明+げみ『月夜と眼鏡』》のイラストを再現したイメージの衣装展示、部屋の入口に「診察室」の看板が出ている《星光の間 泉 鏡花+ホノジロトヲジ『外科室』》、怪しいショータイムのようなBGMがスリリングな雰囲気を盛り上げる《清方の間 谷崎潤一郎+マツオヒロミ『秘密』》へと展開、フォトスポットと「乙女の本棚」の作品紹介展示のある「頂上の間」へと続きます。



動画記事では会場全体をレポートしていますが、実際の会場の世界観への没入感はとても表現しきれません。ぜひ会場で文化財「百段階段」の唯一無二の趣とともに体験していただければと思います。

”もうひとつの展示室”のミュージアムショップでは本展に登場した「乙女の本棚」作品も販売されています。こちらも要チェック。

会場レポート動画
会場を詳細にレポートした動画をYou Tubeチャンネルへ公開しました。一部撮影NGのエリアをのぞいて、会場内をほぼフルに紹介しています。
ススミカマガジントラベローグチャンネルでは、M3PRESSの取材動画や展覧会ニュースの他に、ススミカマガジンの旅動画などを配信中。ぜひチャンネル登録&高評価お願いいたします。
リソース
- 取材ご協力:ホテル雅叙園東京さま
- 記事中の写真及び動画は編集部によるもの(報道内覧会)
展覧会概要
チケット情報ほか、最新の情報については公式ページをご確認ください。
- 「大正ロマン×百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界~」
- 2023年3月25日(土)~6月11日(日)
- 11:00~18:00(最終入館17:30)
- 会場:ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
- https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/roman2023
出展作品
萩原朔太郎『猫町』×しきみ / 中島敦『山月記』×ねこ助 / 太宰治『葉桜と魔笛』×紗久楽さわ /小川未明『月夜とめがね』×げみ / 泉鏡花『外科室』×ホノジロトヲジ / 谷崎潤一郎『秘密』×マツオヒロミ(作品作者名『作品名』×挿絵作者名の順に表記)
立体展示出展者
松竹衣裳株式会社 / 東洋ケース /小澤 康麿 /ステンドグラス工房かわもと /エルバン /キタガワ アキコ /高山 しげこ /ヨダタケシ