展覧会みどころ紹介

7月15日に開幕した特別展「海 ―生命のみなもと―」（東京・上野公園の国立科学博物館)。 過去に開催された特別展「深海」（2013年、2017年）では、深海を探査する人々の挑戦、深海生物などが紹介されましたが、今回の「海展」は海の生態系や、私たちと海との相互関係がテーマ。海で誕生し進化してきた生命、そして人類と海の深いつながりについて知ることで、環境問題はじめ私たちが今後どのように海と関わっていけばいいのか考える機会となる「海を知り、未来を考える」展覧会となります。 会場のようす 編集部撮影（報道向け内覧会） 編集部では開幕に先だって開催された報道内覧会を取材、会場のようすやみどころをご紹介します。この記事は「展覧会見どころ紹介」記事に会場の展示風景を追加、再構成したものです。 動画 動画記事では、会場の詳細レポートと桝太一さんと監修者の先生方によるトークセッションイベント（報道向け内覧会）をフルサイズで収録。 https://youtu.be/q7Of4OTM3_c 特別展「海 ―生命のみなもと―」（国立科学博物館）の４つのポイントと展示構成 会場のようす 編集部撮影（報道向け内覧会） どうして地球には水があるの？ 海の誕生と生命の起源に迫る。 日本の海は世界の海の縮図？！ 多様な生物を育む日本の海を解き明かす！ 旧石器時代から海洋開発の最前線まで―― 人類は、いかにして海からめぐみを得てきたのか。 人類が海に与えている影響とは？ 海の今と向き合い、海の未来を考える。 第１章 海と生命のはじまり そもそも、地球になぜ海が存在するのかを理解するためには、地球における水の起源を解明しなくてはなりません。始原的隕石から太陽系惑星に至る水の起源、地球史における海の誕生と進化、そこで育まれた現在の私たちにつながる初期生命の生態系についてが、最新の研究成果と標本を使って紹介されます。 太古のホワイトチムニー編集部撮影（報道向け内覧会） 会場には、生命起源の場である約40 億年前の深海熱水活動域がジオラマで再現される他、化石と現生生物で海の生物の進化が比較展示されます。 インドネシア・シーラカンス アクアマリンふくしま所蔵編集部撮影（報道向け内覧会） 第２章 海と生き物のつながり 日本列島周辺の海は、現在の地球の海を特徴づける要素が、ほぼ全て揃っていると言われています。プレートの沈み込みに伴う海溝沿いの超深海から非常に活動的な火山列島などの沿岸域まで、多様な地形で構成されているためです。そして、そこを流れる世界最大規模の海流である黒潮は、単に海水の移動にとどまらず、エネルギーを輸送し、日本周辺の気候に影響を与え、陸上を含めた多様な生物を育んでいます。 第２章では、日本列島周辺の海底を形作るプレート運動や火山活動などの活動的な地学現象、黒潮を含む海流が生み出す大規模な海洋循環を解説、それらが生物の分布や多様性にどれほど影響し、大きな広がりが生まれているのかが紹介されます。 高さ約4.7mのナガスクジラ上半身標本 《ナガスクジラ上半身標本》編集部撮影（報道向け内覧会） 高さ約4.7mのナガスクジラの上半身標本が会場に出現。クジラの“潜る・浮かぶ”の垂直運動「ホエールポンプ」が海にもたらす効果とは？ 黒潮と親潮が育む日本の海の豊かな生態系を多数の剥製や標本で解説 南の海の生物 《ナミマツカサ》 写真：国立科学博物館 《ハナミノカサゴ》 写真：国立科学博物館 北の海の生物 《エゾメバル》 写真：国立科学博物館 《マダラ》 写真：国立科学博物館 あの"迷いクジラ”の歯からわかること 《調査のために船に下ろされたマッコウクジラ》 写真：国立科学博物館 2023年1 月、大阪湾の淀川河口付近にマッコウクジラ（オス、体長1469cm）が迷い込み、死亡後、海に沈められた一連の出来事は世間の大きな関心を集めました。国立科学博物館を含む調査チームは学術調査を実施し、このマッコウクジラから歯や胃内容物、寄生虫などの標本や研究資料を採取しました。本展では、この個体の歯と胃内容物が展示されます。 第３章 海からのめぐみ 人類史における海とヒトの関わりは食料や貝殻を装飾品などとして利用することから始まりました。やがて外洋航海技術を発展させると、海を渡って新たな大陸や島嶼への移住を実現させました。特に島嶼では、多様かつ豊富な海産資源を利用する文化が生み出され、ヒトは海とより深く関わるようになりました。 現代では、海からのめぐみはさらに大きなものになっています。海運物流なしにはもはや人類の生活は成り立たちません。さらに人類は、北極海の活用や深海にある鉱物資源の回収まで見据えています。本章では、水産資源の利用にとどまらない様々な「海からのめぐみ」について、人類史を通じて紹介して行きます。 3万年前の航海 徹底再現プロジェクト 《3万年前の航海 徹底再現プロジェクトで使用された丸木舟》 所蔵：東京都立大学 人類はどのようにして日本列島へ渡来したのか？３万年以上前の大航海を再現実験したプロジェクトが紹介されます。 4500ｍ級無人探査機「ハイパードルフィン」の実機 海洋調査の最前線に迫る！会場には4500ｍ級無人探査機「ハイパードルフィン」の実機の展示も。 無人探査機「ハイパードルフィン」 海洋研究開発機構所蔵 編集部撮影 報道向け内覧会 第４章 海との共存、そして未来へ ヨコヅナイワシ 海洋研究開発機構所蔵 編集部撮影 報道向け内覧会 人類は、これまで海から様々なめぐみを享受してきました。一方、近年では、人間活動に伴う環境変化が、海でもあらゆる形で顕在化しています。水産資源の枯渇、海洋酸性化、貧酸素化、そして海洋プラスチック汚染…海で進行するこれらの変化を紹介するとともに、科学技術や我々一人一人の行動変容で、持続可能な形で海を活用していく取り組みが紹介されます。 クジラの胃内容物 国立科学博物館所蔵編集部撮影 報道向け内覧会 リソース 国立科学博物館 プレスリリースより ※報道向け内覧会後、一部を編集部で撮影した会場の実際の展示写真と差し替えを行っています。 最新の情報に関しては、展覧会公式サイトをご確認下さい。 開催概要 特別展「海 ―生命のみなもと―」 Special Exhibition The OCEAN -The Origin of Life 国立科学博物館（東京･上野公園） 2023年7月15日（土）〜10月9日（月・祝） 9時～17時（入場は16時30分まで） 夜間開館：8月11日(金・祝)～8月20日(日)は19時閉館(入場は18時30分まで) ※常設展示は8月11日(金・祝)～8月15日(火)は18時まで。それ以外の期間、常設展示は17時まで（入場は各閉館時間の30分前まで） 休館日：9月4日（月）・11日（月）・19日（火）・25日（月） 展覧会公式サイト https://umiten2023.jp 巡回予定（名古屋展） 本展は2024年春に名古屋市科学館に巡回予定です。

海を知り、未来を考える。特別展「海 ―生命のみなもと―」（国立科学博物館）#展覧会見どころ紹介

海を知り、未来を考える。特別展「海　―生命のみなもと―」（国立科学博物館）#展覧会見どころ紹介