一日でいい、旅をしたい。しらなかったイスラームの世界へ。
東京国立博物館 東洋館にて特別企画「イスラーム王朝とムスリムの世界」が7月6日(火)より開催中です。本展はマレーシア・イスラーム美術館から精選した美術工芸品・歴史資料が展示される、博物館でイスラームの世界を旅するような展覧会です。

展示風景 編集部撮影
編集部では7月11日(月)に行われた報道内覧会を取材。展示風景とあわせて、本展の所を写真とともにご紹介します。なお、会期は2022年2月20日(日)までとなります。
博物館で旅するイスラームの世界
イスラーム教は、7世紀にアラブ人のムハンマドが預言者として唯一神に対する信仰を説き、創始した宗教です。西アジアのみならずヨーロッパ、北アフリカ、中央アジア、東南アジア、そして東アジアへと広がったスラーム教は、キリスト教に次いで世界で2番目に信者の多い宗教にまで発展します。

イスラーム教を受容した世界各地では、多くのイスラーム王朝が交替しましたが、いずれも各地の文化を融合させた独自のイスラーム文化を展開してきました。
マレーシア・イスラーム美術館について
本展はイスラーム関連の豊富なコレクションを有するマレーシア・イスラーム美術館が全面協力。特定の国家や地域によらない、世界規模のイスラーム美術の展示が実現しています。クアラルンプールに所在するマレーシア・イスラーム美術館は、1万点以上のイスラーム美術品と、それに関する文献を所蔵しており、そのコレクションは工芸品、宝飾品や細密画などジャンルも多岐にわたります。
展示のようす
東京国立博物館の正門からむかって右側にある東洋館。昭和43年に開館した同館は谷口吉郎氏による設計、平成25年1月にリニューアルされています。地下を含む全6フロアに、中国、朝鮮半島、東南アジア、西域、インド、エジプトなどの美術と工芸、考古遺物の名品が展示されています。

特別企画の会場は東洋館の地下1階、東洋館12・13室。全15章ものバラエティあふれる構成にて、さまざまなイスラーム王朝が生み出した作品を、時代や地域、テーマを切り口として紹介、今まであまり知られていなかったイスラームの文化とムスリムの世界に触れることができます。
10世紀頃の作品から現代絵画まで、博物館ならではの時空を飛び越えた「イスラームの旅」。会期も2022年2月までと長めなので、何度か再訪してじっくり味わうのもオススメです。
次のセクションからは主な展示作品を構成にそってご紹介していきます。
展覧会のみどころ:構成と主な展示作品
第1章 はじめに ムスリム世界の歴史と文化
14の王朝と1地域のイスラームの歴史と文化の流れを概観しています。
アカンサス文柱頭

モスクの柱の上にのせられていたものです。イスラーム建築もイスラーム以前の地中海世界文化の影響を受けていたことを示しています。
第2章 初期イスラーム王朝
ウマイヤ朝からアイユーブ朝までの初期のイスラーム王朝における歴史と文化が紹介されてます。
金製イヤリング

第3章 モスクの美術
モスクとは、イスラーム教の寺院のことで、祈りを捧げる大変重要な場所です。このセクションでは、モスク内部で使われた作品を展示、イスラーム教における礼拝空間が再現されています。
クルアーン台

第4章 北アフリカおよびスペイン
イスラームの文化圏は、われわれが一般にイメージする中近東の国々だけでなく、北アフリカやスペインにまで拡大しました。本セクションでは、こうした地域に拡がったイスラーム王朝の歴史と文化を紹介。
『クルアーン』(マクリビー体)

第5章 セルジューク朝
11世紀、セルジューク朝は、トルコから西アジア、中央アジアへと支配を拡大しました。セルジューク朝のイスラームの美術にもトルコとイランの地域文化の融合を見ることができます。
エナメル彩騎馬鷹狩人物文鉢

イランで発達したエナメル彩という技法で、1回目の焼成で下絵を定着させ、2回目の焼成で釉上に上絵を焼き付けています。
第6章 マムルーク朝
14世紀インド洋と地中海を結ぶ中継貿易で繁栄したシリアやエジプトを中心に展開したマムルーク朝の文化が紹介されます。
真鍮水盤

表面に銘文を連続して刻むマムルーク朝時代の特徴を示しています。
第7章 イル・ハーン朝とティムール朝
盛んな通商活動に支えられて中央アジアやイランで展開したイル・ハーン朝とティムール朝の文化が紹介されます。
ミフラーブ・パネル

モスクの礼拝する場所に設置されます。濃淡のあるターコイズ・ブルーのタイルを貼り合わせてつくられており、イランや中央アジアの建築によく見られます。
第8章 サファヴィー朝とカージャール朝
イランで展開したサファヴィー朝とカージャール朝の文化を紹介。
シャーナーメの挿絵

『シャーナーメ』はイランの詩人フェルドウスィーが古代ペルシアの神話、伝説、歴史を謳った長編叙事詩です。サファヴィー朝イランでは盛んに細密画として表現されました。
第9章 武器と外交
武器と外交をテーマにしたイスラーム美術の展示です。イスラーム王朝の王族や貴族が、単に戦闘の道具としてだけでなく、権威を象徴するために武器や武具を身に着けていたことが紹介されています。
儀仗

王家が所有した金製の仗です
第10章 イスラーム書道芸術
書は、イスラーム文化の中でもとくに重要視されています。このセクションではイスラームの書と書に関する文房具などを鑑賞できます。
青銅インク壺

第11章 マレー世界のイスラーム王国
インドネシアやマレーシアなど、マレー世界に展開したイスラームの文化を見ることが出来ます。
宝飾ベルト金具

第12章 ムガル朝
インドで展開したムガル朝の華やかな文化を代表するジュエリーと細密画の世界を楽しめます。
宝飾ネックレス

ダイヤモンドとルビーをはめ込んだ花形パーツ、ペーズリー形パーツなどをつなげたもので、インドの宝飾品です。
第13章 オスマン朝
帝国として繁栄したオスマン朝で展開したイスラーム美術を様々なジャンルの作品より紹介。
宝飾小箱

鍍金装飾のほか、ダイヤモンド、ルビー、エメラルドをはめ込んだ小箱で、オスマン朝時代を代表する宝飾品の一つです。
第14章 中国のイスラーム
イスラーム文化は、東アジアにも及びました。中国で製作されたイスラームに関連する文物を紹介しています。
七宝合子

第15章 現代絵画
イスラーム書道の伝統は今も受け継がれ、新たな作品が生み出されています。最後に現代絵画の表現に見るイスラーム文化が紹介されます。
開催概要

入館にはオンラインによる事前予約(日時指定券)が必要となります。
- 展覧会名:マレーシア・イスラーム美術館精選 特別企画
「イスラーム王朝とムスリムの世界」 - 会期:2021年7月6日(火)~2022年2月20日(日)
- 会場:東京国立博物館 東洋館12・13室(上野公園)
- 開館時間:9時30分~17時 ※入館は閉館の30分前まで
- 休館日 :
- 月曜日(祝休日の場合は開館、翌平日休館 ※8月10日、1月3日は開館)
- 12月14日、12月26日-1月1日、1月4日
- 観覧料 :一般1,000円、 大学生500円
- ※特別展は別途事前予約(日時指定券)および観覧料が必要です。
- ※高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方は無料。入館の際に年齢のわかるものをご提示ください。
- ※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳等をご提示ください。
- 主催:東京国立博物館、マレーシア・イスラーム美術館
- 協賛:住友商事株式会社、J-POWER(電源開発株式会社)、三井住友銀行
- 交通:
- JR上野駅公園口、鶯谷駅南口から徒歩10分
- 東京メトロ上野駅・根津駅、京成電鉄京成上野駅から徒歩15分
- お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
東京国立博物館の公式サイト
詳細及び最新の情報等については東京国立博物館の公式サイトをご確認下さい。